今月の主題 Ⅰp・Ⅰsp型大腸sm癌
主題
Ⅰp・Ⅰsp型大腸癌の深達度診断―拡大内視鏡を中心として
著者:
辻雄一郎12
鶴田修12
河野弘志12
唐原健12
富安信夫12
古波倉允12
中原慶太12
立石秀夫12
有馬信之3
前川隆一郎4
佐田通夫12
豊永純12
所属機関:
1久留米大学医学部第2内科
2久留米大学医学部消化器病センター
3久留米大学医学部病理
4社会保険田川病院内科
ページ範囲:P.1571 - P.1581
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要旨 Ⅰp・Ⅰsp型大腸腫瘍42病変を対象として,通常内視鏡と拡大内視鏡の深達度診断能を比較検討した.VⅠ型pitを輪郭明瞭なVⅠ型と輪郭不明瞭なVⅠ型に亜分類して検討したところ,拡大内視鏡による診断能は判定不能病変を除くと全体正診率:86.8%(33/38),sm2,3診断能〔感度:80.0%(8/10),特異度:89.3%(25/28),正診率:72.7%(8/11)〕と良好であったが,それでも通常内視鏡のほうがやや優れていた.さらに通常内視鏡診断を信頼度別に確診と疑診に分け,それぞれに拡大内視鏡診断を加味した場合,疑診病変は6病変から2病変へ減少し,確診病変におけるsm2,3診断能の正診率が77.8%(7/9)から84.6%(11/13)と向上した.以上より,通常内視鏡所見に加え拡大内視鏡による表面微細構造の観察を行えば,診断精度を向上させることができると考えられた.pit patternと病理組織との対比から,輪郭不明瞭なVⅠ型pitは,sm深部浸潤の影響により引き起こされる病変の被覆上皮の変性・脱落を染色性の低下により間接的に認識しているものと考えられた.