今月の主題 胃癌と鑑別を要する炎症性疾患
主題症例
びまん浸潤型胃癌と鑑別を要した早期胃癌を合併したびまん性囊胞性形成異常(diffuse cystic malformation)の1例
著者:
小田一郎1
二村聡2
後藤田卓志1
蓮池典明1
濱中久尚1
神津隆弘1
斉藤大三1
宮川国久3
深川剛生4
下田忠和2
所属機関:
1国立がんセンター中央病院内視鏡部
2国立がんセンター中央病院臨床検査部病理
3国立がんセンター中央病院放射線診断部
4国立がんセンター中央病院外科
ページ範囲:P.1747 - P.1756
文献購入ページに移動
要旨 患者は54歳,男性.検診で胃の異常を指摘され受診した.胃X線検査および内視鏡検査では,幽門前庭部に不整形陥凹性病変を認め,体部は皺襞が腫大し同領域の胃壁は肥厚し,巨大皺襞胃の様相を呈していた.皺襞の腫大は一様ではなく,既存の粘膜ひだの走行を保ちながら腫大の著明な皺襞と目立たない皺襞が不規則に混在しており,また,伸展性も比較的保たれていた.超音波内視鏡検査では,第2~3層に多発する小囊胞を認めたが,第4層の肥厚はなかった,良性の巨大皺襞症を合併した胃癌の診断のもとに胃切除を行った.病理組織学的に体部の巨大皺襞は形成異常としてのびまん性囊胞性形成異常と診断した,本疾患は巨大皺襞胃の様相を呈することが多く,本症例の特徴的な肉眼所見および超音波内視鏡所見は,びまん浸潤型胃癌など巨大皺襞を来す他の疾患との鑑別診断に有用であると考えられた.