今月の主題 Helicobacter pylori除菌に伴う問題点
主題症例
Helicobacter pylori除菌治療により完全寛解した後,局所再発したMALTリンパ腫の1例
著者:
宮林秀晴12
赤松泰次2
望月太郎3
藤森一也4
滋野俊4
清澤研道3
勝山努5
所属機関:
1伊那市営伊那中央総合病院内科
2信州大学医学部附属病院光学医療診療部
3信州大学医学部附属病院第2内科
4国立長野病院消化器科
5信州大学医学部臨床検査医学
ページ範囲:P.589 - P.593
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要旨 患者は55歳の男性.吐血を主訴に来院.緊急内視鏡検査にて止血術を受けた後,再検時の生検組織所見でMALTリンパ腫が疑われた.内視鏡所見では胃体下部後壁に周辺隆起を伴う潰瘍を認め,生検組織所見でびまん性に浸潤するcentrocyte-like cellとlymphoepithelial lesionがみられた.細菌培養と組織所見でHelicobacter pylori(Hp)を認め,Hp陽性の胃MALTリンパ腫と診断した.3剤併用療法による除菌療法を行ったところ,Hpは陰性化し,治療後6か月目の内視鏡および生検組織所見で完全寛解(CR)と考えられた.CR確認後1年10か月目に腹痛を訴えて来院し,内視鏡所見で周辺に隆起を伴う潰瘍が認められ,生検組織所見からMALTリンパ腫の局所再発と考えられた.Hpは陰性であった.CHOP療法3クールおよび30Gyの放射線療法を行い,その後1年8か月再発を認めていない.