今月の主題 cap polyposisと粘膜脱症候群
主題
cap polyposisの病理組織学的特徴―粘膜脱症候群との比較
著者:
八尾隆史1
江崎幹宏2
古賀秀樹3
岩下明徳4
知念孝敏5
中村典資1
岩井啓一郎1
高田三由紀1
堤修一1
西山憲一1
豊島里志6
松本主之7
飯田三雄2
恒吉正澄1
所属機関:
1九州大学大学院形態機能病理学
2九州大学大学院病態機能内科学
3川崎医科大学消化器科内科Ⅱ
4福岡大学筑紫病院病理
5北九州医療センター内科
6北九州医療センター病理
7九州大学附属病院光学医療診療部
ページ範囲:P.631 - P.639
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要旨 cap polyposisの臨床病理学的特徴を明らかにするために粘膜脱症候群(MPS)と比較検討した.cap polyposisではほとんどの症例で病変が直腸のみならずS状結腸や下行結腸にも認めるが,MPSでは病変は直腸のみであった.組織学的には両者では炎症細胞浸潤の程度と分布および線維筋症の程度が異なり,MPSで比較的高率に認める粘膜内血管の変化(筋性血管の出現,血管壁内フィブリン滲出,血栓形成)やdiamoid-shaped cryptの出現がcap polyposisでは低率であった.さらに,cap polypの詳細な組織学的観察により,これらの発育進展様式が以下のように推察された.①それらの初期像は平坦な粘膜に生じた粘膜表層性かつ限局性慢性活動性炎症細胞浸潤.②その後陰窩の延長と軽度の線維筋症,肉芽組織増生,うっ血(血管拡張),循環不全による陰窩上皮の壊死(びらん)が起こり小隆起性病変を形成.③そしてこれらの小さな隆起が集簇して大きな隆起を形成.④さらに粘膜脱が高度な症例ではさらに陰窩が延長し線維筋症が著明となる.このように両疾患は臨床病理学的に異なり,本質的には病因が異なる疾患群であることが示唆されたが,cap polypの進展過程で粘膜脱が関与している可能性も考えられた.