今月の主題 cap polyposisと粘膜脱症候群
主題
cap polyposisと隆起型MPSとの病理組織学的差異
著者:
橋立英樹1
渡辺英伸1
味岡洋一1
西倉健1
渡辺研也2
坂充2
小原勝敏2
佐藤由紀夫2
北條洋3
鈴木理3
米倉研史4
新国恵也5
五十嵐俊彦6
櫻井俊弘7
中野浩8
赤松泰次9
山野泰穂10
工藤進英11
所属機関:
1新潟大学医学部病理学第1講座
2福島県立医科大学医学部内科学第2講座
3福島県立医科大学医学部病理学第1講座
4新潟県厚生連魚沼病院内科
5新潟県厚生連魚沼病院外科
6新潟県厚生連病理センター
7福岡大学筑紫病院消化器科
8藤田保健衛生大学消化器内科
9信州大学光学医療診療部
10秋田赤十字病院胃腸センター
11昭和大学横浜市北部病院消化器センター
ページ範囲:P.661 - P.670
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要旨 cap polyposis(CP)とそれとの異同が問題となる隆起型MPSとを用いて,両者の組織所見を比較検討した.対象はCP12症例22病変,隆起型mucosal prolapse(MP)36症例36病変である.ヘマトキシリン・エオジン(H・E)染色以外に,可能な限り各種特殊染色も行った.結果は,CPはMPSに比べて,①陰窩深部の分岐・融合が少ない(1中視野当たり2か所以上の腺管分岐・融合を陽性とした場合)(CP:MP=18.2:86.1%,p<0.001),②シアロムチンが圧倒的に優位(70:0%,p<0.001),③粘膜上層の粘膜固有層にデスミン陽性細胞の出現がないかごくわずか(デスミン陽性細胞++以上を陽性とした場合)(12.5%:100%,p<0.001)であった.その他,Ki-67陽性細胞からみた増殖細胞の分布パターンと,パネート化生の有無については一定の傾向がみられ,両者は組織学的に鑑別可能な疾患と考えられた.発現する粘液コア蛋白の種類や量,表層の肉芽組織や血管性変化,線維性滲出物の有無,炎症細胞の種類や分布には差がみられなかった.CPと隆起型MPとの間に炎症刺激の強度や持続期間に起因すると思われる組織学的所見の程度差はみられたが,本質的差はみられなかった.両者には共通の発生原因として粘膜の牽引があり,そこに二次的に加わる刺激の程度の強さと長さによって,組織学的な差異が生じている可能性が考えられた.