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文献詳細

雑誌文献

胃と腸37巻5号

2002年04月発行

今月の主題 cap polyposisと粘膜脱症候群

主題症例

10年以上の経過で粘膜脱症候群からcap polyposisへの移行を観察できた1症例

著者: 中野浩1 長坂光夫1 神谷雅人1 高濱和也1 渡邊真1 黒田誠2 川瀬恭平3 家田浩男3

所属機関: 1藤田保健衛生大学消化器内科 2藤田保健衛生大学病理科 3胃腸科肛門科家田病院

ページ範囲:P.741 - P.749

文献概要

要旨 64歳,女性.粘液性下痢,下腹部痛を主訴に来院した.注腸X線検査で,直腸に狭窄があり,その上部の腸管は攣縮していた.大腸内視鏡検査で,横走する粘膜ひだの上に浅い潰瘍を認め,その部を先端として粘膜脱の所見が観察された.癒着した卵巣を狭窄・固定点としたS状結腸のMPSと診断し,自覚症状が消退しないため,1991年6月13日に直腸,S状結腸切除術を施行した.切除標本で肥厚した粘膜ひだを認め,所々がポリープ状に隆起していた.隆起部分は,腺筋症,炎症性細胞浸潤を伴う延長した腺管と脈管に富み,浮腫状の挙上した粘膜下層からなり,病理組織診断は粘膜脱症候群であった.その後,症状は再燃し,吻合部を切除し下行結腸に人工肛門を造設した.しかし,その後も,残された直腸よりの粘液便と人工肛門より上部の腹痛も持続していた.約10年後の1999年11月のX線,内視鏡検査で横行結腸に頂上に白苔を持つポリープが多発していた.cap polyposisと診断した.ポリペクトミー標本でポリープは腺筋症を伴う延長した腺管からなり,表層には粘液で囊胞状に拡張した腺管があり,表面には粘液成分が付着していた.今日,cap polyposisは粘膜脱症候群の病態のもとに生ずると考えられている.この症例は経過観察の中で,このことを画像と病理組織像から証明した症例である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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