今月の主題 炎症性腸疾患と腫瘍(1)潰瘍性大腸炎
主題
潰瘍性大腸炎における癌のサーベイランスの問題点―問題例を通して
著者:
横山正1
伊藤治23
横山泰久1
菊池学1
中野英明1
横山功2
長与健夫4
丹羽康正5
宮原良二5
佐々木洋治5
渡邉聡明6
名川弘一6
所属機関:
1横山胃腸科病院外科
2横山胃腸科病院内科
3三好町民病院内科
4横山胃腸科病院病理
5名古屋大学医学部大学院病態修復内科学
6東京大学医学部腫瘍外科学
ページ範囲:P.915 - P.923
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要旨 潰瘍性大腸炎に合併するcolitic cancerのサーベイランスにおける問題点を示すため2例の症例を提示した.①40歳男性で左側大腸炎型.経過10年のサーベイランスにてgiant pseudopolypのポリペクトミーと周囲の生検を行った.この生検は異型なしと判断されたが見直し診断にて異型が疑われた.2年3か月後のサーベイランスでは腫瘍性隆起を認めdysplasia associated lesion or mass(DALM)と判断しDALMの生検でlow grade dysplasia,周囲粘膜の生検でhigh grade dysplasiaを認め大腸全摘を施行した.結果は漿膜浸潤陽性の進行癌であった.拡大内視鏡は腫瘍性隆起と炎症性ポリープの鑑別は可能であったが,深達度診断には有用でなかった.生検病理診断の問題,サーベイランス間隔の問題,深達度診断の問題などを示した.②42歳男性で左側大腸炎型.経過8年の頻回再燃型で再燃を来して当院へ紹介.当院の初回内視鏡で直腸に結節集簇型様の3cm超の病変を発見.生検で高度異型腺腫と区別できなかったが,頻回再燃でもあり大腸全摘術を施行.術後病理では活動性の潰瘍性大腸炎に合併した3.8cm×3.0cm大の結節集籏型様の腺腫内癌と判断された,本症例をcolitic cancerと考えると,左側大腸炎型に対しても7~8年目からサーベイランスを開始する必要性を示唆する.今後も問題例を集積して,サーベイランス失敗例のないように改良していくことが必要と考えられた.