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今月の主題 炎症性腸疾患と腫瘍(1)潰瘍性大腸炎 主題
通常腺腫とcolitic cancer/dysplasiaの鑑別―生検を含む
著者: 田中正則1
所属機関: 1弘前大学医学部第2病理
ページ範囲:P.971 - P.979
文献購入ページに移動要旨 潰瘍性大腸炎(UC)のdysplasiaはcolitic cancerに進展していくリスクの高い前癌病変であるため,多くは全大腸切除の適応である.内視鏡的に認知できる隆起を伴ったdysplasiaはdysplasia-associated lesion or mass(DALM)と呼ばれており,特に初回検査で診断された症例はlow grade dysplasiaであっても浸潤癌を合併していることがある.DALMの多くは不整な粗大顆粒状あるいは絨毛様の板状隆起を呈する境界不明瞭な病変(non-adenoma-like DALM)であり,典型例での診断は比較的容易である.しかし,なかには腺腫様のDALM(adenoma-like DALM;Ad-DALM)も認められ,同じくUC患者に発生するsporadic-type adenoma(UC-SpAd)との鑑別が問題となる.UCの内視鏡的・組織学的罹患範囲外に発生した境界明瞭な病変はUC・SpAdと診断してよいが,罹患範囲内に発生したpolypoid dysplastic lesionについては,その周囲に平坦なdysplasiaや癌が証明されない限りAd-DALMと確定診断することはできない(indeterminate lesion).厳密な鑑別はできないが,UC発症から10年以上経過している50歳未満の患者で,DALMに特徴的ないくつかの組織学的所見とp53強陽性・β-catenin陰性の所見を有するものはprobable Ad-DALMに分類して外科的対応を検討する.UC-SpAdとprobable UC-SpAdはfree marginが確保されていれば一般患者の腺腫と同様の対応が可能であるので,DALMの一部でないことを確認するための病変周辺からの複数個生検が重要な意味を持つ.
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