今月の主題 炎症性腸疾患と腫瘍(2)潰瘍性大腸炎以外
主題
潰瘍性大腸炎以外の炎症性腸疾患と腫瘍―その臨床病理組織学的特徴
著者:
西上隆之1
平田一郎2
江頭由太郎3
富田寿彦4
小阪正4
福田能啓4
福井信4
里見匡迪4
池内浩基5
藤原由規5
柳秀憲5
中川一彦5
山村武平5
植松邦夫1
所属機関:
1兵庫医科大学病理学第2講座
2大阪医科大学第2内科
3大阪医科大学第1病理
4兵庫医科大学消化器内科
5兵庫医科大学第2外科
ページ範囲:P.1059 - P.1065
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要旨 炎症性腸疾患と大腸癌の臨床病理学的特徴について,主として本邦文献を渉猟して検討した.放射線腸炎および大腸結核合併大腸癌は通常大腸癌と比較し年齢差を認めなかった.Crohn病および潰瘍性大腸炎合併大腸癌は明らかに若年に認められた.これらの4疾患に合併した大腸癌の肉眼型では,通常大腸癌にみられる2型の頻度は著しく少なかった.また組織型は通常まれな粘液癌を高頻度に認めた.それらの原因としては,これらのいずれの炎症性腸疾患も,粘膜下層に線維化がみられ,粘膜下層に腫瘤を形成できないこと,線維化によって,管腔内に粘液が排泄できないことが考えられた.炎症性腸疾患と大腸癌の合併は,炎症の好発部位に発生する頻度が高いことから偶然ではないと考えられた.