今月の主題 炎症性腸疾患と腫瘍(2)潰瘍性大腸炎以外
主題症例
小腸型Crohn病に合併し回腸S状結腸瘻からの生検で術前診断しえた回腸癌の1例
著者:
藤田穣1
古賀秀樹1
飯田三雄2
八尾隆史3
黒木文敏1
平川克哉1
水野充1
垂水研一1
浦上淳4
角田司4
三上芳喜5
松本啓志1
春間賢1
所属機関:
1川崎医科大学内科学(消化器Ⅱ)
2九州大学大学院医学研究院病態機能内科学
3九州大学大学院医学研究院形態機能病理学
4川崎医科大学消化器外科学
5川崎医科大学病理学
ページ範囲:P.1067 - P.1075
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要旨 患者は54歳,女性.1982年に小腸型Crohn病と診断され,栄養療法を行うも緩解と増悪を繰り返し,1993年には小腸造影検査で回腸S状結腸瘻を指摘された.2000年2月に水様性下痢と腹痛が増悪したため,当科入院となった.大腸内視鏡検査時のS状結腸の瘻孔開口部よりの生検から腺癌組織が検出されたため,瘻孔部を含めた回腸部分切除術およびS状結腸切除術を行った.切除標本の病理所見では,瘻孔部付近の回腸縦走潰瘍部を中心として固有筋層まで浸潤する高分化から中分化型腺癌を認めた.しかし,術前の画像診断はもとより切除標本の肉眼的観察においてさえも,癌の存在や浸潤範囲を認識することは困難であった.以上の症例の詳細な報告とともに,小腸癌を合併したCrohn病を文献的に集積し,その臨床像を解析した.