胃と腸37巻8号

2002年07月発行

今月の主題 炎症性腸疾患と腫瘍（2）潰瘍性大腸炎以外 主題症例

放射線腸炎に発生した大腸癌の1例

著者： 中島力哉¹ 北川晋二¹ 岡崎正敏¹ 池原康人² 田中伸之介² 岩永真一³ 中村裕一⁴

所属機関： ¹福岡大学病院放射線科 ²福岡大学病院第1外科 ³福岡大学病院第1病理 ⁴中村胃腸科

ページ範囲：P.1076 - P.1080

要旨　患者は70歳の女性．1994年2月に腹痛にて近医を受診した．注腸X線検査にて，直腸・S状結腸に狭小化が認められ，精査目的にて紹介入院となった．ゾンデ小腸造影検査では回腸遠位部にも狭小化を認め，注腸X線検査にてS状結腸に腫瘍性病変が認められた．既往症として1967年に，子宮頸癌にて放射線治療が施行されており，放射線腸炎に合併した大腸癌を疑い，Miles' operationおよび回腸部分切除術が行われた．術中内視鏡検査にてS状結腸に1型の隆起性病変が認められた．病理組織診断は放射線腸炎に合併した大腸粘液癌であった．放射線誘発大腸癌と考えられる1例を経験したので報告した．