今月の主題 炎症性腸疾患と腫瘍(2)潰瘍性大腸炎以外
主題症例
マイクロサテライト不安定性を示した放射線誘発大腸癌の1例
著者:
新井正美123
上野雅資2
小泉浩一4
小口正彦5
二宮康郎2
関誠2
畦倉薫2
太田博俊2
坂谷新6
木下博勝7
山下孝5
石川雄一7
柳澤昭夫7
山口俊晴2
三木義男1
宇都宮譲二3
加藤洋7
武藤徹一郎8
所属機関:
1癌研究会附属病院遺伝子検査室
2癌研究会附属病院消化器外科
3癌研究会附属病院家族性腫瘍センター
4癌研究会附属病院消化器内科
5癌研究会附属病院放射線科
6坂谷クリニック
7癌研究会癌研究所病理部
8癌研究会附属病院
ページ範囲:P.1081 - P.1087
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要旨 子宮体癌の放射線治療後,照射野内に大腸癌が発生した症例(67歳,女性)を経験した,本症例は,その臨床経過から,遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)の可能性を考慮する必要があると考えられたため,MSI試験を施行した.その結果,MSIは検索したすべてのlocusにおいて陽性だった.さらに免疫組織化学的検討により,腫瘍部においてhMSH2蛋白の発現消失を認めた.生殖細胞変異を検討した結果,hMSH2遺伝子に遺伝子多型とされるミスセンス変異を認めたが,明らかな病的変異は今のところ見つかっていない.本症例では,経過中に照射野内に3つの腺腫成分を伴う癌が多発しており,さらに背景粘膜には放射線大腸炎の所見とともに,異型腺管が散在していた.MSI陽性を示す放射線誘発大腸癌はまれであり,本症例は放射線二次発癌とミスマッチ修復異常の関連が示された貴重な症例である.