今月の主題 炎症性腸疾患と腫瘍(2)潰瘍性大腸炎以外
主題症例
進行大腸癌と多発dysplasiaを合併した放射線大腸炎の1例
著者:
森山智彦1
松本主之2
佐藤智雄1
岩井啓一郎3
八尾隆史3
壬生隆一4
飯田三雄1
所属機関:
1九州大学大学院医学研究院病態機能内科学
2九州大学医学部附属病院光学医療診療部
3九州大学大学院医学研究院形態機能病理学
4九州大学大学院医学研究院腫瘍外科学
ページ範囲:P.1089 - P.1095
文献購入ページに移動
要旨 症例は68歳,女性.31歳時に子宮頸癌の診断で外科的切除と放射線療法を受け,59歳時に放射線小腸炎のため小腸部分切除の既往あり.左下腹部圧迫感が出現したため大腸X線・大腸内視鏡検査を施行したところS状結腸に管状狭窄と粗糙粘膜および周囲に透亮像を伴う潰瘍性病変を,横行結腸に扁平な隆起性病変を認め,ともに生検にて高分化型腺癌と診断されたため,拡大左半結腸切除術を施行した.切除標本では放射線大腸炎罹患部であるS状結腸に深達度ssの進行癌を認め,癌の一部と周囲粘膜にはdysplasiaを伴っていた.さらに進行癌周囲のS状結腸には,放射線大腸炎に合致する組織学的変化を認めた,また,放射線照射域外の横行結腸に深達度mのⅡa+Ⅱc型早期大腸癌も認めた.本例の進行癌は放射線大腸炎を背景に発生したと考えられた.