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文献詳細

雑誌文献

胃と腸38巻10号

2003年09月発行

文献概要

今月の主題 胃腺腫の診断と治療方針 主題

長期観察および内視鏡的切除例からみた胃腺腫の治療方針―積極的に治療する立場から

著者: 高橋寛1 藤崎順子1 神山知子1 石山晃世志1 山本頼正1 保坂尚志1 千野晶子1 土田知宏1 浦上尚之1 小泉浩一1 藤田力也2 柳澤昭夫2 加藤洋3 武藤徹一郎4

所属機関: 1癌研究会附属病院総合健診センター 2癌研究会附属病院内科 3癌研究会附属病院病理 4癌研究会附属病院外科

ページ範囲:P.1411 - P.1418

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要旨 胃腺腫に対する内視鏡的治療の意義について臨床的検討を行った.対象とした症例は,当院にて発見された胃腺腫1,121例のうち,内視鏡的切除(以下ER)が施行された118例を対象に病変の大きさ,内視鏡所見の変化および病理組織学的所見について検討した.ERが施行された118例のうち,腺腫例が75例,腺腫内癌と診断された症例は43例であった.病変の最大径と病理組織所見の関係では,10mm以下の症例では,腺腫内癌の症例は28%であったが,11~20mmでは49%,21mm以上では23%と,腫瘍径と癌の合併頻度に相関はなかった.内視鏡所見の変化は,腺腫例では形態的変化がなかった症例は79%であった.増大例は9%であり,隆起の表面に陥凹を伴った症例は5%,発赤陥凹例は5%であった.一方,癌合併例では,形態変化のなかった症例は65%であった.増大例は12%,陥凹を伴った症例は9%,発赤陥凹例は7%であり,癌合併例で腫瘍の増大や発赤・陥凹を伴う頻度が高かった.生検による病理組織所見とERの病理組織所見を比較検討した結果,ER前の生検による腺腫および腺腫内癌の正診率は71%であった.正確な診断と治療を行うには,total biopsyという観点から,積極的に内視鏡的切除を行うべきであると考えている.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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