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文献詳細

雑誌文献

胃と腸38巻10号

2003年09月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

IIc型早期大腸癌と鑑別を要したS状結腸潰瘍の1例

著者: 名倉一夫1 冨田栄一1 杉山昭彦1 尾辻健太郎1 白上洋平1 篠田徹1 高井光治1 下村順子1 塩屋正道1 西垣洋一1 高橋健1 杉原潤一1 若原達男1 山田鉄也2

所属機関: 1岐阜市民病院消化器内科 2岐阜市民病院中央検査部

ページ範囲:P.1457 - P.1462

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要旨 患者は61歳の男性.主訴は便潜血反応陽性精査.注腸X線検査ではS状結腸に最大径7mm,多方向よりひだ集中を伴う陥凹性病変を認めた.ひだの先端は腫大し,中央にほぼ均一に淡くバリウムの溜まりを認めた.内視鏡検査では辺縁に隆起を伴う不整形の陥凹性病変として認められた.陥凹部の大半は発赤調であるが,拡大観察を行うと大半は無構造で一部に絨毛状構造を呈していた.陥凹辺縁の不整像は認めなかった.当初,粘膜下層深部まで浸潤するIIc型早期大腸癌を疑い外科的切除も考慮したが,生検結果で腫瘍の所見は認められず経過観察とした.6か月後の内視鏡検査にて瘢痕化を確認している.大腸に単発,孤立性に陥凹性病変を認めた場合,このような良性潰瘍の存在も念頭に入れ,診断にあたることが肝要であると考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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