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文献詳細

雑誌文献

胃と腸38巻11号

2003年10月発行

文献概要

今月の主題 粘膜下腫瘍様の形態を示した消化管癌 主題

粘膜下腫瘍様の形態を示した食道表在癌―臨床および画像的特徴,鑑別診断

著者: 門馬久美子1 吉田操2 山田義也3 小澤広3 江川直人3 荒川丈夫1 川田研郎4 太田正穂4 出江洋介4 河内洋5 船田信顕5 葉梨智子6

所属機関: 1都立駒込病院内視鏡科 2都立墨東病院外科 3都立駒込病院内科 4都立駒込病院外科 5都立駒込病院病理科 6東海大学東京病院外科

ページ範囲:P.1505 - P.1518

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要旨 上皮下に腫瘍があり,癌巣の表面を正常上皮が覆っている粘膜下腫瘍様の形態を示す食道癌は,表面に露出している癌巣部分が少ないため,早期癌の段階で発見することは困難であり,発見時点で既に粘膜下層以深に進行していることが多い.粘膜下腫瘍を示す食道癌には,低分化型扁平上皮癌も含まれるが,その大半は,特殊な組織型の癌であり,未分化癌,類基底細胞癌,腺様囊胞癌,腺扁平上皮癌,粘表皮癌などが挙げられる.これらの癌を鑑別するには,①隆起の形(隆起の丈と基部の広さ),②周囲粘膜からの立ち上がり,③表面の凹凸や表面性状,④上皮内伸展の有無に注目する.未分化癌と腺様囊胞癌は,隆起の立ち上がりが急峻で,隆起の丈が高い0-Ipl型に対し,類基底細胞癌は,立ち上がりなだらかで丈の低い0-Isep型か,隆起の丈が高く,基部が狭い0-Ip型を示していた.表面の結節状の凹凸は,腺様囊胞癌が最も目立ち,未分化癌,類基底細胞癌と順に凹凸が目立たなくなっていた.未分化癌はしばしば上皮内伸展を伴い,類基底細胞癌では,隆起の頂上に扁平上皮癌を伴うことが多い.腺扁平上皮癌は,陥凹が主体の0-IIc型病変であった.粘膜下腫瘍様の形態を示す,特殊な組織型の食道癌は,リンパ行性や血行性の転移が早く,扁平上皮癌に比べ予後が悪いため,治療方針を決定するためにも,治療前の組織学的診断が不可欠である.

参考文献

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3)日本食道疾患研究会(編).臨床・病理 食道癌取扱い規約,8版.金原出版, 1992
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7)清水秀明,尾沢巌,稲田高男,他.食道類基底細胞癌の1例.日消外会誌 25 : 102-106, 1992
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9)渡辺英二郎,板橋正幸,長谷部孝裕,他.食道原発悪性黒色腫の2例.消化器内視鏡の進歩 34 : 227-231, 1989
10)下里幸雄,井手博子,板橋正幸(編).取扱い規約に沿った腫瘍鑑別診断アトラス食道.文光堂,pp122-127, 1994

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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