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文献詳細

雑誌文献

胃と腸38巻11号

2003年10月発行

文献概要

今月の主題 粘膜下腫瘍様の形態を示した消化管癌 主題

粘膜下腫瘍様の形態を示した胃癌―臨床および画像的特徴と鑑別診断

著者: 結城豊彦1 佐藤匡1 石田一彦1 妹尾重晴1 鈴木敬1 平澤大1 菅原俊樹1 洞口淳1 高沢磨1 齋藤知恵1 松永厚生1 野村美樹子1 内海潔1 金潤哲1 藤田直孝1

所属機関: 1仙台市医療センター消化器内科

ページ範囲:P.1527 - P.1536

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要旨 粘膜下腫瘍の形態を呈し,組織学的所見で癌の粘膜露出面の長径が腫瘍長径の1/3以下であった胃癌は切除単発胃癌の1.27%とまれであった.その臨床病理学的特徴をみると,M領域に多く,組織型は管状腺癌から低分化腺癌,粘液癌と多様であった.管状腺癌は間質量硬性型が多く,低分化腺癌ではlymphoid stromaや著明な好中球浸潤を伴う症例がみられた.リンパ管侵襲,静脈侵襲,リンパ節転移を高率に認めた.内視鏡的所見として腫瘍表面の陥凹,発赤,白苔付着などの所見が腫瘍中央部から偏位して存在することが特徴的であった.発赤は蚕食像を伴う不整像を呈しており癌の診断に重要であった.X線的には腫瘍頂部の陥凹の不整像が癌を示唆する所見であった.超音波内視鏡(EUS)では,境界不明瞭な内部エコー不均一像として描出されることが多く,また粘膜下異所性胃底腺(SHG),lymphoid stromaや,粘液癌などの特徴をとらえることができ,SMTとの鑑別に有用であった.粘膜下腫瘍様胃癌では通常の生検診断が困難なこともあり注意を要した.生検陰性でも画像診断上癌が疑われる場合には,ボーリング生検や超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNAB)および,診断的な内視鏡的粘膜切除術(EMR)などの補助的手技が癌の確定診断に有効であった.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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