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文献詳細

雑誌文献

胃と腸38巻11号

2003年10月発行

今月の主題 粘膜下腫瘍様の形態を示した消化管癌

主題

粘膜下腫瘍の形態を示した大腸癌―病理学的特徴

著者: 西上隆之1 平田一郎2 江頭由太郎3 青山伸郎4 三戸岡英樹5 白坂大輔6 中正恵二1 平野博嗣1 沖村明1 大江正之1 嵯峨山健1 植松邦夫1

所属機関: 1兵庫医科大学病理学第2講座 2大阪医科大学第2内科 3大阪医科大学第1病理 4神戸大学光学医療診療部 5神戸海星病院内科 6神戸大学応用分子医学講座糖尿病代謝・消化器・腎臓内科

ページ範囲:P.1537 - P.1542

文献概要

要旨 粘膜下腫瘍の形態を示した早期大腸癌3例を提示し,その組織発生について今まで報告された症例の検討も加えて考察した.〔症例1〕はリンパ濾胞の増生の強い腫瘍であり,この種の症例はその所見だけでも粘膜下腫瘍の肉眼所見を呈することがある.しかし,本例では囊胞状に拡張した腺管の増生,表層にみられた異型腺管は粘膜下から浸潤した組織像以外みられないこと,直腸前壁に存在したことなどから,colitis cystica profundaの癌化も否定できないと考えた.〔症例2〕は,粘膜下に膿瘍,リンパ濾胞の増生,限局性線維化など多彩な所見がみられ,それらが複合して粘膜下腫瘍様所見を呈したと考えられた.〔症例3〕は粘液癌であるが,粘液癌が粘膜下腫瘍様所見を呈するという報告はあるが,早期癌での報告はなかった.大腸癌は,胃癌や食道癌と比べて組織型が多彩でないことが,粘膜下腫瘍様の形態を示す大腸癌が少ない原因と考えられた.

参考文献

1)河田佳代子,石黒信吾,辻直子,他.粘膜下腫瘍様形態を示す胃癌の臨床病理学的特徴.胃と腸 30 : 739-746, 1995
2)松田圭二,渡辺英伸,桑原史郎,他.粘膜下腫瘍様の食道表在癌─病理形態学的特徴.胃と腸 32 : 671-689, 1997
3)渡辺英伸.組織所見と肉眼所見との対応,病変の再構築(3)腸─その2.胃と腸 23 : 117-120, 1988
4)小林英之,春山克郎,池内駿之,他.著明な石灰化を伴い壁外発育を示した直腸膠様癌の一例.日消誌 78 : 161, 1981
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7)濱本博美,山本博,木村弥都子,他.粘膜下腫瘍様の形態を示した大腸癌の2 症例.Gastroenterol Endosc 39 : 1105-1112, 1997
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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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