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文献詳細

雑誌文献

胃と腸38巻12号

2003年11月発行

文献概要

今月の主題 上部消化管拡大観察の意義 主題

食道扁平上皮癌の拡大内視鏡

著者: 井上晴洋1 里館均1 加澤玉惠1 佐藤嘉髙1 薄井信介1 工藤進英1

所属機関: 1昭和大学横浜市北部病院消化器センター

ページ範囲:P.1629 - P.1640

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要旨 重層扁平上皮に覆われる食道では,いわゆる腺上皮のpit patternにあたるものが存在せず,重層扁平上皮を透見して観察される表在の微細血管網の変化を読むことが重要であることが判明してきた.市販されている80倍の拡大内視鏡を用いれば,生体内の正常食道粘膜で上皮乳頭内血管ループ(IPCL ; intra-epithelial papillary capillary loop)が観察される.さらに,そのIPCLが癌では特徴的変化を示していく.すなわちIPCLの拡張・蛇行・口径不同・形状不均一の4因子が揃う.また癌の壁深達度はIPCLの破壊の程度に相関する.特に粘膜下層癌ではIPCLがほぼ完全に破壊され,異常血管が出現することが多い.異常血管には2種類あり,不規則なIPCLはVi(irregular vessel)として同定され,m3,sm1に特徴的な所見である.またsm2など深部浸潤においては,比較的大きな異常血管Vn(new abnormal tumor vessel)が出現する.この異常血管(Vn)はsm癌に非常に特異的な所見である.また,超拡大観察として,生体内で生きた細胞を直接観察することを試みた.マイクロマシーン技術を応用したレーザー共焦点顕微鏡のプローブ(EndoMicroscopy system®,prototype,Olympus)を使用することで,無固定無染色のままで,500倍まで拡大観察し,生体内で生きた細胞の観察をすることに成功した.その際に癌細胞を正常細胞の画像と比較すると“輝度の逆転現象”(Swiss cheese sign,Doughnut sign)が起こり,癌に特徴的な所見であることが判明してきた.このように食道扁平上皮における拡大内視鏡,超拡大内視鏡ではそれぞれ特徴的内視鏡所見が新知見として得られている.

参考文献

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3)井上晴洋,遠藤光夫,竹下公矢,他.透明プラスチックキャップを用いた内視鏡的粘膜切除術(EMRC).Gastroenterol Endosc 34 : 2387-2390, 1992
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8)井上晴洋,猪狩亨,岩井尚武.仮想生検と仮想病理.癌の臨床 46 : 1128-1131, 2000
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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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