文献詳細
文献概要
早期胃癌研究会
2003年7月の例会から
著者: 平田一郎1 浜田勉2
所属機関: 1大阪医科大学第2内科 2社会保険中央総合病院消化器内科
ページ範囲:P.1722 - P.1724
文献購入ページに移動〔第1例〕 82歳,男性.粘膜下腫瘍様形態を呈した上行結腸の進行大腸癌(症例提供:わたり病院消化器科 奥村浩二).
注腸X線,内視鏡所見の読影を清水(大坂鉄道病院消化器内科)が担当した.注腸X線所見では,回盲弁から肛側の上行結腸に5~6cmの陰影欠損を指摘した.病変は平滑で非常になだらかな隆起を形成するため,病変の主座は漿膜に近い深部であるとした.隆起は限局性で平滑な輪郭を呈するため炎症よりも腫瘍を疑う所見であるとした.非上皮性腫瘍を否定できないが,病変が漿膜付近の深いところにあるため,重複腸管に合併する癌が考えられるとした.斉藤(旭川医科大学第3内科)は,隆起の口側の粘膜表面は不整であるとし,炎症が考えられるとした.回腸終末部が描出されておらず,同部に上行結腸に影響を及ぼす穿通性の潰瘍が形成されていると推測した.炎症の原因として膠原病や腸結核が考えられるとした.内視鏡所見では,清水は回盲弁は著変なく,その口側に潰瘍形成を伴うなだらかな隆起を認めるとした(Fig.1).病変は硬い感じがあり腫瘍であると診断した.潰瘍辺縁は発赤するも明らかな腫瘍の露呈は指摘できない.潰瘍は隆起の口側に偏在し非上皮性腫瘍にしては非典型的であるが,上皮性としても非典型的であるためどちらか結論づけることはできないと述べた.多田(多田消化器クリニック)は注腸で虫垂が写っていないことより虫垂炎の波及も考えられるとした.牛尾(九州がんセンター)は注腸,内視鏡所見を合わせて腫瘍と考える,また,壁外性に発育する腫瘍で病変の一部に粘膜集中像を認めることより,desmoplastic reactionは強く病変は癌であるとした.また,粘膜下腫瘍の形態を示すことより,未分化癌か内分泌細胞癌が考えられるとした.
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