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文献詳細

雑誌文献

胃と腸38巻13号

2003年12月発行

今月の主題 消化管への転移性腫瘍

序説

消化管への転移性腫瘍

著者: 田中信治1

所属機関: 1広島大学光学医療診療部

ページ範囲:P.1753 - P.1754

文献概要

 近年,悪性腫瘍の罹患率は増加しており,原発腫瘍あるいは転移性腫瘍に対する正確な診断学の必要性がますます高まっている.悪性腫瘍罹患患者に対しては,常に転移病巣の有無を検索する必要があるが,その際,臨床医は転移性腫瘍の形態学的特徴を十分理解しておかねばならない.一方で,原発巣が不明なもの,転移病巣が先に診断されるもの,原発巣が転移病巣に類似した変化を認め診断に苦慮する場合もある.本号では,消化管への転移性腫瘍の形態学的特徴を整理し,臨床診断に役立てようという目的で,“消化管への転移性腫瘍”を主題に取り上げた.消化管への転移性腫瘍は剖検例ではまれではないが,生前にきちんとした画像で形態学的に診断されることは比較的少なく,臨床的には散発的に文献報告されているのが現状である.実際,消化管への転移性腫瘍の形態診断学的特徴に関するまとまった成書は少なく,本特集号の持つ役割とその期待は大きい.

 悪性腫瘍の消化管への転移経路としては,血行性あるいはリンパ行性転移と直接あるいは播種性浸潤が挙げられるが,いずれにしても,粘膜よりも下層に病変の主座があるため粘膜下腫瘍の性格を持つ.古典的には,牛眼像(bull's eye appearance)1)が有名で,脈管行性に消化管壁に転移した腫瘍が粘膜下腫瘍様に隆起を形成し,その中央に陥凹を伴ったものである.進行し大きくなれば,決潰して潰瘍形成を伴い,原発性の上皮性腫瘍との鑑別に苦慮することもある.

参考文献

1)牛尾恭輔.牛眼像(bull's eye appearance).八尾恒良(監),「胃と腸」編集委員会(編).胃と腸用語事典.医学書院,p110, 2002
2)道傳研司,海崎泰治,細川治,他.全消化管にポリポーシス様の転移を来した胃印環細胞癌の1例.胃と腸 37 : 1238-1242, 2002
3)平賀裕子,安井弥,熊本隆,他.多発するびらん様微小陥凹病変を呈した転移性大腸印環細胞癌の1例.日消誌 99 : 615-621, 2002
4)北條隆,石井誠一郎,白杉望,他.食道壁内転移を伴った幽門部胃癌の1例.日消外会誌 32 : 2248-2252, 1999
5)小林利彦,吉田雅行,川辺昭浩,他.直腸癌術後に食道転移を来した1症例.外科治療 80 : 639-641, 1999
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8)宮川国久,山本奈都子,飯沼元,他.転移性胃腫瘍の上部消化管造影所見の検討.臨床放射線 47 : 1019-1024, 2002
9)中辻直之,杉原誠一,堀川雅人,他.乳癌小腸転移の1切除例.臨床外科 58 : 579-583, 2003
10)太田博俊,畦倉薫,関誠,他.転移性大腸癌の臨床病理.胃と腸 23 : 633-643, 1998
11)石川勉,縄野繁,水口安則,他.転移性大腸癌の形態診断─ X線像の解析を中心に.胃と腸 23 : 617-630, 1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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