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文献詳細

雑誌文献

胃と腸38巻13号

2003年12月発行

文献概要

今月の主題 消化管への転移性腫瘍 主題

病理から見た消化管転移性腫瘍

著者: 原岡誠司1 岩下明徳1 中山吉福2

所属機関: 1福岡大学筑紫病院病理 2福岡大学医学部病理学教室

ページ範囲:P.1755 - P.1771

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要旨 消化管の転移性腫瘍の特徴を把握するため,過去13年間に日本病理剖検輯報に登録された剖検例と自験外科切除例50例を用い,臨床病理学的立場から検討した.剖検における消化管転移性腫瘍73,134例のうち部位別には小腸が23,740例と最も多く,順に結腸・直腸・虫垂18,252例,胃16,315例,食道10,848例,肛門・肛門管187例であった.転移率が高い悪性腫瘍の原発部位は近隣臓器や腹腔内臓器が多く,剖検例の消化管転移性腫瘍は腹腔内諸臓器悪性腫瘍の末期像として近隣臓器からの直接浸潤や播種性転移によるものが多くを占めると考えられた.一方,自験例50症例(54病変)の検討では,転移部位は食道2例,胃4例,小腸19例,虫垂4例,結腸21例,直腸4例であった.原発臓器は胃14例,結腸14例で最も多く,腹部臓器以外では肺7例,乳腺1例であった.転移浸潤形式により分類すると,播種性転移22例,直接浸潤17例,壁内転移8例,遠隔転移7例であった.近隣臓器からの直接浸潤や播種性転移によるものは固有筋層以深に病巣の主座を置き,漿膜下組織層や粘膜下層において線維性間質の増生(desmoplastic reaction)を伴う症例が多くみられた.一方,粘膜や粘膜下層を中心に癌細胞が髄様密に増殖し線維性間質の増生が乏しい症例は,血行性・リンパ行性による壁内転移や遠隔転移例に多くみられ,なかでも,主に粘膜固有層において浸潤増殖する発育形態は遠隔転移例においてのみ認めた.消化管転移性腫瘍の臨床病理学的な特徴の把握は,消化管転移巣あるいはその原発巣の早期発見や的確な治療法の選択に必要であろうと考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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