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文献詳細

雑誌文献

胃と腸38巻13号

2003年12月発行

今月の主題 消化管への転移性腫瘍

主題症例

粘膜下腫瘍様の転移巣が先に発見された早期胃内分泌細胞癌の1例

著者: 中井呈子1 細井董三2 山村彰彦3 入口陽介1 大野康寛1 水谷勝1 小田丈二1 大浦道久1 中村尚志1 内田千秋1 竹下恵美子1 山田耕三1

所属機関: 1東京都多摩がん検診センター消化器科 2霞ヶ浦成人病研究事業団 3東京都多摩がん検診センター検査科

ページ範囲:P.1831 - P.1837

文献概要

要旨 患者は55歳.男性.他院人間ドックの胃X線検査で穹窿部大彎に40mm大の粘膜下腫瘍様病変が発見された.前年の検診では指摘されておらず,急速に増大したGISTが疑われ,精査目的で当センターを紹介された.精査の結果,穹窿部の粘膜下腫瘍様病変とは別に食道胃接合部の胃側に約3/5周に拡がる0-IIa+IIc型病変が認められ,生検では乳頭腺癌を認めた.胃全摘標本の病理組織学的検査では,食道胃接合部の病変は高分化型管状腺癌主体のSM2の早期癌で,粘膜内深部に3mm大の内分泌細胞癌が共存し,脈管侵襲を認めた.粘膜下腫瘍様病変は左噴門リンパ節が塊状に癒合した内分泌細胞癌から構成され,術前診断では2病変の関連性は確定できなかったが,食道胃接合部の胃癌からの転移と考えられた.本症例は原発巣の中の微小な内分泌細胞癌成分が,その強い転移傾向により転移巣が急速に発育した結果,原発巣より先に発見されることになった興味深い症例である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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