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特集 全身性疾患と消化管病変 各論 2.神経系疾患
1)Cushing潰瘍
著者: 川口実1
所属機関: 1国際医療福祉大学付属熱海病院内科
ページ範囲:P.501 - P.505
文献購入ページに移動 1932年Cushingが脳腫瘍術後に生じた食道・胃・十二指腸潰瘍を報告して以来,中枢神経障害に合併する消化管病変をCushing潰瘍と称するようになった.Cushing潰瘍は急性胃十二指腸粘膜病変に分類され,一種のストレス潰瘍である.発生機序としては中枢神経障害時に副交感神経が刺激され,迷走神経機能亢進が生じ,粘膜の血流障害と酸分泌亢進の結果,潰瘍が生じると考えられている.しかし,その他にも多くの因子が複雑に関与している.発生頻度は10~70%と大きな差がみられるが,中枢神経障害の重症度,内視鏡検査の頻度,時期,所見のとらえ方によって異なると考えられる.病変としては胃の出血性病変が圧倒的に多く,特に胃体部に多く認められる.出血に対しては従来から行われている内視鏡的止血法を行う.H2受容体拮抗薬に予防効果があるとの報告もある.いずれにしても,脳血管障害患者を診たら常に上部消化管病変の可能性を考えることが重要である.
参考文献
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