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文献詳細

雑誌文献

胃と腸38巻5号

2003年04月発行

文献概要

今月の主題 胃型早期胃癌の病理学的特徴と臨床像―分化型癌を中心に 主題

分化型胃癌の悪性度―形質発現の点から

著者: 伊藤栄作1 滝澤登一郎1

所属機関: 1東京医科歯科大学医学部病理

ページ範囲:P.701 - P.706

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要旨 分化型SM胃癌を対象に形質発現からみた悪性度の違いを組織型・脈管侵襲・リンパ節転移の点から検討した.その結果,乳頭腺癌(50%)では管状腺癌(25.4%)よりも胃型優位の形質をもつものが有意に多かった.また,全体でみると乳頭腺癌(44%)は管状腺癌(6%)よりもリンパ節転移率が明らかに高かった.乳頭腺癌の中では胃型優位のものが脈管侵襲率が明らかに高いが,胃型優位のものと腸型優位のものとの間でリンパ節転移率に有意差はなかった.また,リンパ節転移を欠く腸型乳頭腺癌が術後多発肝転移を来して死亡した症例が1例存在した.一方,管状腺癌では形質発現による脈管侵襲・リンパ節転移率に有意差はなかった.胃型(優位)乳頭腺癌の中に高悪性度のものが含まれていることは疑う余地もないが,形質発現からみた分化型胃癌の生物学的動態・悪性度の違いについては長期術後follow up例を含めた今後の検討を必要とする.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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