文献詳細
今月の主題 消化管腫瘍診断におけるX線検査の有用性
序説
文献概要
消化管疾患の診断におけるX線検査の位置づけの推移と問題点
日本の消化管形態診断学の進歩は白壁・市川らの開発した二重造影を中心としたX線検査の画像所見の解析とともに進んできたと言っても過言ではない1).内視鏡検査の普及に伴って消化管疾患の診断において内視鏡とX線検査のどちらが優れているかの論議がなされていた時期があった2).その後の内視鏡機器の急速な進歩と内視鏡治療手技の開発により,内視鏡検査がX線検査に比較してドラマチックに増加した事実を踏まえて,“X線検査は胃癌や大腸癌の診断に必要か”との議論がなされた3)4).そしてここ数年の消化管疾患の臨床検査・診断は,ほぼ完全に内視鏡を主体として検査体系が組まれるようになっている.そのためX線検査が軽視され,結果としてX線検査が施行できない,読影できない若い消化器医が増加していることが危惧される.X線検査が軽視される主な原因として,造影検査を行っても病変の描出が良好にできないことが考えられる.
日本の消化管形態診断学の進歩は白壁・市川らの開発した二重造影を中心としたX線検査の画像所見の解析とともに進んできたと言っても過言ではない1).内視鏡検査の普及に伴って消化管疾患の診断において内視鏡とX線検査のどちらが優れているかの論議がなされていた時期があった2).その後の内視鏡機器の急速な進歩と内視鏡治療手技の開発により,内視鏡検査がX線検査に比較してドラマチックに増加した事実を踏まえて,“X線検査は胃癌や大腸癌の診断に必要か”との議論がなされた3)4).そしてここ数年の消化管疾患の臨床検査・診断は,ほぼ完全に内視鏡を主体として検査体系が組まれるようになっている.そのためX線検査が軽視され,結果としてX線検査が施行できない,読影できない若い消化器医が増加していることが危惧される.X線検査が軽視される主な原因として,造影検査を行っても病変の描出が良好にできないことが考えられる.
参考文献
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