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文献詳細

雑誌文献

胃と腸39巻13号

2004年12月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

剖検にて確診した胃内に脱出した食道癌肉腫の1例

著者: 阿部剛1 近藤健司1 浜田勉1 鵜沼清仁2 田中靖2 奥田圭二2 北村成大3 下屋正則4 斎藤聡5

所属機関: 1社会保険中央総合病院内科 2社会保険中央総合病院放射線部 3社会保険中央総合病院病理部 4篠崎駅前クリニック 5東邦大学大橋病院消化器内科

ページ範囲:P.1805 - P.1810

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要旨 症例は73歳の男性.持続する上腹部痛のために近医で行った上部消化管内視鏡検査にて噴門部に径50mmの腫瘤を認め当院に紹介となった.噴門部に表面は凹凸不整なやや発赤調の腫瘤があり頂部に線状の陥凹を伴っていた.造影検査では噴門小彎に立ち上がりは境界鮮明で表面凹凸不整な径50mmの球形の上皮性様腫瘍を認めた.腫瘍からの生検結果は胃平滑筋肉腫であった.全身検索にて胃周囲リンパ節,腹腔内リンパ節の腫脹著明であり,手術は断念し,対症療法のみ行ったが,約2か月後に死亡した.剖検にて,腫瘍は食道胃接合部から立ち上がり,胃内に発育していた.組織学的には,腫瘍の大部分は肉腫様であったが,基部とその周囲は口側,肛門側ともに扁平上皮癌が存在していた.腹腔リンパ節や肝臓には扁平上皮癌の転移が認められた.したがって,食道胃接合部の食道寄りから発生し,胃内へ脱出していた食道癌肉腫であった.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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