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文献詳細

雑誌文献

胃と腸39巻3号

2004年03月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

貯留嚢胞を合併した表層拡大型食道sm癌の1例

著者: 藤澤貴史1 大西裕1 上田純也1 堀松高博1 来住稔1 竹田章彦1 小池隆史1 坂口一彦1 前田光雄1 川畑康成2 宮本勝文2 楠本長正2 西上隆之3

所属機関: 1石川島播磨重工業健康保険組合播磨病院内科 2石川島播磨重工業健康保険組合播磨病院外科 3兵庫医科大学第2病理

ページ範囲:P.361 - P.367

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要旨 患者は56歳,女性.喫煙歴は20本/日×30年,飲酒歴は日本酒2合/日×30年.内視鏡検査で,胸部中部食道に全周性で長径7cmにわたる発赤した浅い陥凹性病変を認めた.病変内の前壁~左壁側に粘膜下腫瘍様の〔隆起 A〕が存在し,その隆起の口側は表面が粗大結節状だが肛門側は平滑であった.後壁側にも〔陥凹内隆起 B〕が存在した.胸部下部食道には直径2cmのIIc病変を認めた.表層拡大型食道sm癌と診断し,食道亜全摘術を施行した.病理組織学的には前者は52×50mm,Ip+IIc型の扁平上皮癌でNo. 7のリンパ節に転移を認めた.〔隆起 B〕でsm浸潤していたが,〔隆起 A〕は貯留嚢胞による隆起が主体で癌はsm1にとどまっていた.癌の上方発育により食道腺の導管が閉塞し貯留嚢胞が形成された可能性が示唆された.貯留嚢胞を合併した食道癌は世界で2例目である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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