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文献詳細

雑誌文献

胃と腸39巻3号

2004年03月発行

文献概要

Coffee Break

IIc内の“島状粘膜残存”と“聖域”―私はこう考える

著者: 高木國夫1

所属機関: 1林外科病院

ページ範囲:P.383 - P.386

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 「消化管病理基礎講座(12)消化管疾患の肉眼所見に関する用語」(胃と腸 36巻10号:1303-1306,2001)の「島状粘膜残存」の項目で,IIc内の島状粘膜に関連して“聖域”が解説されていないのは,理解に苦しむものである.

 IIc内で,多くは中心部に非癌粘膜が存在するのはどうしてか,1950年代には不明だった.私も1959年,早期胃癌の病理を検討した際に,潰瘍を伴った症例で潰瘍辺縁に再生粘膜を80.6%(29/36)に認めていた1)が,この再生粘膜が潰瘍の瘢痕化により,島状再生粘膜―すなわち“聖域”になることは,当時,悪性サイクルの考えがまだ検討されていなかった時期で,理解できなかった.胃潰瘍の良性サイクルに準じて,IIc内の胃潰瘍の再燃,瘢痕が悪性サイクルとして臨床的に検討されはじめた時期に,村上忠重先生が1966年「潰瘍瘢痕癌中心部に存在する非癌性再生腺腔について」2)を報告し,IIc内の非癌粘膜が胃潰瘍瘢痕部の再生粘膜によるものであって,当時,ベトナム戦争でアメリカ空軍による北爆で,首都ハノイが聖域として爆撃を免れていたことに関連して“聖域”と名付けられた.村上先生のご指摘とユニークな命名に深く感銘を受けた思い出がある3)

参考文献

1)髙木國夫.胃粘膜癌の病理組識学的研究.癌の臨 5 : 737‐754, 1959
2)村上忠重,他.潰瘍瘢痕癌中心部に存在する非癌性再生腺について.日消誌 55 : 229-300, 1966
3)髙木國夫.追悼 村上先生の“聖域”に想う.胃と腸 31 : 1423, 1996
4)村上忠重.胃潰瘍癌に関する新しい考え方.順天堂医誌 13 : 157-165, 1967
5)髙木國夫.早期消化器癌アトラスII,早期胃癌②.p 139,ベクトル・コア社,1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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