7. 消化管への転移性腫瘍の診断
消化管への転移性腫瘍の診断
著者:
岩下生久子
,
牛尾恭輔
,
岩下明徳
,
植山敏彦
,
平賀聖久
,
村中光
,
宇都宮尚
,
上田真信
,
水口昌伸
,
宮川国久
,
下田忠和
,
井野彰浩
,
下田悠一郎
,
西山憲一
,
今村健三郎
,
岡村健
,
村上純滋
,
一瀬幸人
,
渡辺秀幸
ページ範囲:P.647 - P.662
要旨 消化管の転移性腫瘍のうち,腫瘍塞栓性転移(血行性,リンパ行性転移)を中心に概説した.悪性腫瘍の消化管への転移の頻度は,食道1%前後,胃2.3~6%,小腸1.14~2.9%,大腸1.9%で食道転移の頻度が最も低いと思われた.転移の原発巣は,すべての臓器で肺癌,乳癌の頻度が比較的高く,他には食道では,胃癌,子宮頸癌,舌癌が,胃では食道癌,悪性黒色腫が,小腸では,悪性黒色腫,腎癌が,大腸では,子宮癌,食道癌が多くみられた.症状は,食道では嚥下困難が最も多く貧血がこれに続いた.胃では吐下血,体重減少,嘔気嘔吐が多く,小腸では下血,イレウスが,大腸では腹痛,腹満感,排便困難等,臓器によって特徴的な所見がみられた.転移巣の個数は,多発例は半数以下と少ないが(食道40%,胃47%,小腸34~37%,大腸22%),表面型を呈する大腸転移では83.3%が多発病変であった.形態は粘膜下腫瘍様のみならず,原発の癌や悪性リンパ腫に類似するものもみられ,粘膜下腫瘍様を呈した頻度は半数以下であった(食道40%,胃43%,小腸33.3%,大腸22.2~28.6%).治療法は手術が基本となるが,他部位に転移を合併している症例も多く,化学療法が施行されることも多い.近年では単発の表面型の転移に対しては,より侵襲の少ない治療法として,polypectomyやEMRを施行して予後の改善を見た症例も報告されるようになってきた.予後は概ね不良であるが,近年は,2年以上の生存例の報告も増えており,早期発見と積極的な治療によって,予後の向上が期待できると思われた.