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文献詳細

雑誌文献

胃と腸39巻4号

2004年04月発行

文献概要

特集 消化管の粘膜下腫瘍 2004 各論 2. 消化管カルチノイドの診断と治療

3) 大腸

著者: 今村哲理1 黒河聖1 吉井新二1 安保智典1 本谷聡1 奥田博介1 森本一郎1 萩原武1 西岡均1 山崎健太郎1

所属機関: 1札幌構成病院胃腸科

ページ範囲:P.592 - P.600

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要旨 本邦文献の解析とわれわれの成績を加え,画像診断・治療を中心に総説的に大腸カルチノイドにつき記載した.消化管カルチノイドは本邦では,消化管内分泌細胞のカテゴリー中,低悪性度の腫瘍を指すと理解されている.大部分は大きさが10mm以下で無症状であり,大腸癌検診の精査や内視鏡的ポリープ切除後の経過観察中に偶然発見されている.好発部位は直腸で,結腸はまれである.内視鏡的には,黄色調で毛細血管透見像を有するIs様の粘膜下腫瘍が典型的像である.大きさの増大とともに,凹凸,中心陥凹,潰瘍形成がみられるようになる.大きさが20mmを超えると,約50%の病変で固有筋層に浸潤する.転移の最も大切な因子は大きさで,大きさ10mm以下での転移はまれであるが,10~20mmで時に転移が認められ,20mmを超えるとほとんどの例で転移陽性となる.よって,大きさ10mm以下で,EUSで粘膜下層に病変が限局し,生検で内分泌細胞癌が否定されれば,内視鏡的粘膜切除か局所切除が適切な治療法である.大きさが10~15mmでは,原則的には根治手術をするが,結論の出ていない領域でもあり,陥凹や潰瘍形成の有無など肉眼所見を加味し,年齢,他疾患の合併,根治手術のリスクおよび必要性を考慮して治療を決定する.20mmに近い場合には根治手術を要する.いずれにしろ,注腸X線,内視鏡検査同様,治療前EUS,CT,MRI検査は大切かつ有用である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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