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今月の主題 大腸腫瘍に対する拡大内視鏡観察―V型pit pattern診断の問題点 症例検討
V型pit pattern診断の現状と問題点―V型亜分類に焦点を当てた多施設アンケート結果から
著者: 味岡洋一1 工藤進英2 林俊壱37 佐藤明人45 渡辺英伸6
所属機関: 1新潟大学大学院医歯学総合研究科分子・病態病理学分野 2昭和大学横浜市北部病院消化器センター 3済生会新潟第二病院消化器科 4新潟大学大学院医歯学総合研究科分子・診断病理学分野 5新潟大学消化器肝臓内科 6新潟大学 7現:林俊壱クリニック
ページ範囲:P.769 - P.791
文献購入ページに移動大腸sm癌に対する内視鏡的摘除適応の拡大に伴い,pit pattern診断も癌のsm浸潤度判定に焦点が向けられるようになってきた.工藤ら1)2)のpit pattern分類では,V型(不整ないしpit構造が消失し無構造であるもの)が粘膜内,sm以深を含め癌の指標とされたが,sm浸潤度判定を目的としてV型亜分類が考案され3)4),これまでにV型亜分類と癌のsm浸潤度とを関連づける多くの試みがなされてきている5)~9).V型亜分類には,鶴田ら3)のVI型(V irregular;不整形,不揃いのpit pattern)とVA型(V amorphous;pitの数が減少し,無構造または無構造に近いpit pattern),工藤ら4)のVA型(V amorphism;pit の配列の乱れ,腺口の輪郭の厚みが不均一などのpit patternの不整を呈するもの)とVN型(V non-structure;pit patternが消失し無構造な表面性状を呈するもの),とがあった.現在は,用語上は,VI型(V irregular)とVN型(V non-structure)の亜分類で統一されている10).
大腸の腫瘍・非腫瘍および腫瘍の良悪性判定におけるpit pattern診断の臨床的有用性については既にコンセンサスが得られている.更に,pit patternを,病変の治療法選択(内視鏡的摘除か,外科切除か)に直結する癌のsm浸潤度(sm1までか,sm2以深か)に結びつけることは,pit pattern診断学を完成させるための重要なステップと言えよう.しかし,V型亜分類の用語は統一されたものの,それらの定義や診断基準は研究者によっては必ずしも一致しておらず,pit patternとsm浸潤度との対応づけに関してもいまだ統一的見解が得られていないのが現状と思われる.
こうした背景をもとに,厚生労働省がん研究助成金研究班(「大腸腫瘍性病変における腺口構造の診断学的意義の解明に関する研究」工藤進英班長)では,V型pit pattern判定に関する多施設アンケート調査を行った.本稿ではその結果を用いて,大腸腫瘍のV型pit pattern診断の現状と問題点について考察したい.
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