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文献詳細

雑誌文献

胃と腸39巻6号

2004年05月発行

今月の主題 深達度診断を迷わせる食道表在癌―その原因と画像の特徴

主題

高周波数細径超音波プローブによる食道表在癌の深達度を誤認させる要因と画像の特徴

著者: 有馬美和子1 多田正弘1

所属機関: 1埼玉県立がんセンター消化器内科

ページ範囲:P.901 - P.913

文献概要

要旨 食道表在癌91例を対象として,高周波数細径超音波プローブ(細径プローブ)による深達度診断を誤認させる要因について,その病理組織像と比較して検討した.深達度診断は粘膜筋板(mm)を反映している9層に分離したうちの3層目(3/9層)の破壊の程度から判定した.m1・m2癌では28例中27例(96%)を正診していたが,m1癌とm2癌の正確な鑑別や,mmに接する程度のm3癌との鑑別は難しかった.これは,食道炎による線維化や癌巣周囲のリンパ濾胞過形成と癌浸潤部との鑑別が難しいことに起因していた.m3・sm1癌は25例中18例(72%)の正診率であったが,3/9層の不整・欠損・中断所見とm3・sm1癌の範囲とは一致しない場合もみられ,特に小範囲の浸潤例で一致しないことが多かった.腫瘍周囲に生じるリンパ濾胞過形成や細胞浸潤,線維化,sm層内の脈管や食道腺,retention cystなどによって修飾を受け,実際より広い範囲を浸潤部として指摘していることが多かった.さらに,層構造の変化が高度な部分が癌最深部でないこともあり,m3癌とsm1癌の鑑別を難しくしていた.m3深部浸潤範囲が広いsm1癌は深読みしやすく,sm1癌部分の診断は特に難しかった.低エコー腫瘤が3/9層を中断させ,4/9層にまで及ぶ場合にsm2・sm3癌と診断し,38例中37例(97%)を正診していた.小範囲の浸潤であっても深部浸潤部を捕らえることができ,信頼度が高かった.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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