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文献詳細

雑誌文献

胃と腸39巻7号

2004年06月発行

文献概要

症例

特異な出血機転を呈した管外発育型小腸GISTの1例

著者: 矢野豊1 長濱孝1 菊池陽介1 二宮風夫1 八尾建史1 松井敏幸1 八尾恒良1 河原一雅2 平野憲二2 大重要人3 岩下明徳3 小野広幸4 山本博徳5

所属機関: 1福岡大学筑紫病院消化器科 2福岡大学筑紫病院外科 3福岡大学筑紫病院病理部 4福岡大学筑紫病院放射線科 5自治医科大学内科学講座消化器内科学部門

ページ範囲:P.1081 - P.1086

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要旨 患者は59歳の男性.黒色便,全身倦怠感等を主訴に入院した.腹部血管造影検査,double balloon法による小腸内視鏡検査により,空腸腫瘍または空腸動静脈奇形を疑い腹腔鏡下に手術を施行した.術中にTreitz靱帯より約15cm肛門側の空腸に,管外性に発育した4.5×3.5cmの粘膜下腫瘍を認め,腹腔鏡補助下に空腸部分切除術を施行した.肉眼的,病理組織学的所見で粘膜面に明らかなびらんや潰瘍は認めなかった.本例の出血機序は詳細な病理学的検索により,腫瘍自体のねじれや腫瘍の管外からの圧迫等の物理的な刺激により血流障害が生じた結果,血栓が形成され虚血状態になった粘膜固有層,粘膜下層に血管が新生し,そこに小腸粘膜面への食物塊等の物理的刺激が加わり,血管が破綻し出血したと考えられた.本邦の出血症状を認めた管外発育型小腸GISTの報告例で粘膜面について記載のあるものはすべて腫瘍表面にびらん・潰瘍を伴っており,本例のように,粘膜の欠損を認めない例はなかった.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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