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文献詳細

雑誌文献

胃と腸39巻8号

2004年07月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

短期間に形態変化を来した早期大腸癌の1例

著者: 小沢俊文1 渡辺秀紀1 堀江裕子1 奥村浩二1 土屋豊一1 丹治伸夫1 安斎幸夫1 佐藤祐治2 遠藤剛2 柴田昇2 海上雅光3

所属機関: 1わたり病院消化器科 2わたり病院外科 3わたり病院病理科

ページ範囲:P.1179 - P.1185

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要旨 症例は59歳,男性.便潜血反応陽性を指摘され当院を初診した.大腸内視鏡検査でS状結腸に約6mm大の隆起性病変を指摘された.病変の立ち上がりは正常粘膜であり,淡く発赤した陥凹局面と陥凹内結節を認め,いわゆるIs+IIc型形態を呈していた.陥凹内の微細表面構造観察でも乱れはあるものの無構造部分は認められなかった.約3か月後の内視鏡検査では大きさに変化はないものの陥凹内結節はやや縮小かつ減高していた.また微細表面構造に変化は認めなかった.さらに3週間後には陥凹が深くなりIIc+IIa型へと変化していた.深達度sm深部浸潤癌と診断し腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行した.病理組織学的には高分化型腺癌が粘膜筋板を押し下げるように粘膜深部に発育していたが,粘膜筋板は保たれており間質反応も認められず深達度はmと診断した.大きな形態変化を来しながら最終的にm癌であった症例はまれであり報告した.

参考文献

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13)宇野良治,棟方昭博.大腸sm癌の“non lifting sign”.胃と腸 27 : 910, 1992

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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