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今月の主題 十二指腸の精密診断 綜説
十二指腸下行部のX線診断
著者: 高瀬潤一1 笹本登貴夫2 大野孝則2 三木亮2 中村和成2 遠藤保利2 茂田徹2
所属機関: 1国立千葉病院放射線科 2国立千葉病院内科
ページ範囲:P.1373 - P.1381
文献購入ページに移動十二指腸をX線像として明確に画き出すためには,いわゆる十二指腸低張造影(Hypotonic duodenography15)一定の語がないのでここではこう呼んでおく)が最も目的にかなった方法と思われる.1911年Skinner32)は十二指腸内にゾンデを通じて造影剤を注入し胃陰影を除きその全走行を検査する方法を考えた.わが国では1926年中川・結城20)によって創始され,彼らは本法を十二指腸単独造影と呼んだ.続いて藤浪11)・高安37)らはこの単独造影法を用いて診断した十二指腸の種々の疾患を報告している.高安37)は十二指腸の逆蠕動が強くてゾンデがそこに入らない時は微量の硫酸アトロピンを注射すると述べているが,十二指腸の低張造影を意図したものではなかった.1938年Ritvo26)はベラドンナの経口投与により薬理学的十二指腸検査を行なった.以来日常の胃・十二指腸検査に種々の薬剤を用いた人もあるが,これらはいずれも球部の診断に応用され,その全体を追及するためのものではなかった.
十二指腸低張造影とはゾンデを十二指腸下行部に挿入し,蠕動抑制剤の注射および粘膜麻酔剤の注入によりその蠕動と緊張を完全に除去して行なう単独造影である.筆者らは昭和22年頃から十二指腸のX線学的研究を続けて来た.始めは薬剤を使用せず藤浪らの方法を用いていたが11)20)37),十二指腸の運動曲線を描記しさらに種々の薬剤に対する反応を検討している中に,その蠕動抑制と低緊張を得るためにはアトロピンが有効であるのを見,続いてブスコパン,パドリンなどを使用するようになり,現在ではこれに胆管造影を同時に加えて十二指腸およびその周囲臓器のX線学的研究を行なっている28)30)31)33)34).
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