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文献詳細

雑誌文献

胃と腸4巻11号

1969年11月発行

文献概要

今月の主題 十二指腸の精密診断 綜説

乳頭部癌の診断と治療

著者: 穴沢雄作1

所属機関: 1順天堂大学医学部外科

ページ範囲:P.1383 - P.1395

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はじめに

 十二指腸乳頭部癌は2つの立場から取り扱われている.小腸癌の中に含まれる十二指腸癌の一分型として論議する考とえ,膵胆管系の癌腫として,膨大部領域癌や膵頭部癌と同列に扱う立場とがある.

 十二指腸癌は稀であるが,十二指腸は小腸のうちでも癌の多発部位である.1958年から1962年までの日本病理剖検集報によると,総数56,916例中,小腸悪性腫瘍は105例で,うち十二指腸癌は82例で剖検総数に対して0.14%となっている.Mateerは発生部位を,乳頭上部,乳頭部,乳頭下部の3つに分け症状に特徴があることをのべている.欧米の統計で649例の部位をみると,乳頭上部167例(25.7%),乳頭部290例(44.7%),乳頭下部192例(29.6%)で乳頭部にもっとも多い.この乳頭部癌は十二指腸粘膜から原発するものを言い.総胆管膨大部粘膜から生ずるのは除くべきである.十二指腸には癌腫以外に滑平筋筋腫が多く,良性腫瘍として腺腫,ブルンネル腺腫,嚢胞,神経鞘腫,平滑筋腫,カルチノイド,脂肪腫膵迷入などが発生する.これら十二指腸腫瘍は近年にいたり消化管線X診断の発達や十二指腸ファイバースコープの開発などによって,症例数が急速に増加している.

 一方,膵胆管系の癌腫として取り扱うのは,乳頭部に現われる癌腫は,しばしば膵頭部,総胆管などと密接で臨床症状もこれらの癌腫と差異が少なく,黄疸を発生し胆汁うっ滞に伴なう肝障害や膵機能異常などを惹起し,重篤な全身障害を呈するため,単なる十二指腸粘膜の癌腫とみなさずに,膵胆管系の癌腫として一括して診断,治療を行なうのがよいからである.

 さて,乳頭部の癌の発生母地として,①乳頭粘膜上皮,②乳頭部を覆う十二指腸上皮,③総胆管上皮,④膵管上皮,⑤膵腺房上皮,⑥乳頭部の導管粘膜附属腺上皮,⑦乳頭領域に迷入する副膵組織など,7種類の上皮が考えられる.これらの上皮には過剰再生ないし小腺腫の発生はしばしば認められる.しかしGrahamの指摘するごとく,明らかに破壊的増殖を呈し始めた5mm以下の微小癌においても,すでにこれら発生母地の推定は不可能である.したがって,Childらは膵頭十二指腸癌Pancreaticduodenal carcinomaという語で総括しているが,総胆管膨大部に癌腫が多いので,膨大部癌Ampullary cancer(総胆管末端部癌)あるいは,膨大部周囲癌Periampullary cancer(膨大部領域癌)の言葉を用いる人も多い.この中には上記の発生母地から生ずる癌腫がすべて含まれることになるが,主たる病変の占居部位によって膵頭部癌,総胆管癌,乳頭部癌などと命名し,主たる病変部位が定め難いときは膨大部癌とする人が多い.本論文では,十二指腸乳頭部粘膜に存在する癌腫を乳頭部癌とした.さらに乳頭部粘膜は正常であるが,膨大部癌などで十二指腸粘膜に癌性浸潤,癌性潰瘍を生じたものも併わせ検討した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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