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文献概要
今月の主題 潰瘍性大腸炎 綜説
潰瘍性大腸炎の臨床
著者: 渡辺晃1
所属機関: 1東北大学医学部山形内科
ページ範囲:P.1491 - P.1500
文献購入ページに移動はじめに
激しい血性下痢や高熱を主症状とする患者のなかに,病理学的には潰瘍をともなう炎症によって特徴づけられる,非伝染性の,重篤な大腸炎のあることが古くから注目され,欧米ではWilks1)(1868)の記載以来ulcerative colitis1),simple ulcerative colitis2),Colitis ulcerosa3),Colitis chronica gravis4),chronic ulcerative colitis,nonspecific ulcerative colitis,idiopathic ulcerative colitis,asylum dysentery,innominate ulcerative colitis,ulcero-hemorrhagic colitis,chronic suppurative colitis,thrombo-ulcerative colitisなどと呼ばれ,わが国では稲田5)(1928)の報告以来重症大腸炎または潰瘍性大腸炎と称せられている.しかるに,当時“colitis”という名称は臨床的には,必ずしも病理組織学的な炎症を示す用語として用いられているわけではなかったが,やがて大腸の機能的疾患であるirritable colon過敏大腸症の概念が新に登場し,従来spastic colitis,mucous colitis,およびmechanical colitisなどと称せられていたあいまいなものが過敏大腸症の範疇に含まれるにおよんで6),近年,欧米では原因不明の非特異性大腸炎として本症が大きくクローズアップされる結果となってきている.
一方わが国においても,従来症状や理学的所見だけからしばしば慢性大腸炎という診断が下されていたが,筆者らは大腸各部の生検や細胞診を用いてこれらを検討し,これらの大部分は過敏大腸症の範疇に入ること,および大腸に発生する原因不明の非特異性炎症は,将来はいくつかの疾患に区分される可能性を否定しえないとしても,現段階では潰瘍性大腸炎の範疇に入れざるをえないことを明らかにしている7)8).このように,今日わが国では本症をめぐる考え方が大きく変りつつあるように思われるので,ここでは筆者らが最終的には生検,手術,または剖検による組織学的所見を把握したのちに診断を下した本症84例の臨床成績にもとずいて,本症の頻度,症状,理学的ならびに検査所見,診断ならびに鑑別診断,合併症,内科的療法ならびに外科的療法の適応,および予後について検討を加えてみたいと思う.
激しい血性下痢や高熱を主症状とする患者のなかに,病理学的には潰瘍をともなう炎症によって特徴づけられる,非伝染性の,重篤な大腸炎のあることが古くから注目され,欧米ではWilks1)(1868)の記載以来ulcerative colitis1),simple ulcerative colitis2),Colitis ulcerosa3),Colitis chronica gravis4),chronic ulcerative colitis,nonspecific ulcerative colitis,idiopathic ulcerative colitis,asylum dysentery,innominate ulcerative colitis,ulcero-hemorrhagic colitis,chronic suppurative colitis,thrombo-ulcerative colitisなどと呼ばれ,わが国では稲田5)(1928)の報告以来重症大腸炎または潰瘍性大腸炎と称せられている.しかるに,当時“colitis”という名称は臨床的には,必ずしも病理組織学的な炎症を示す用語として用いられているわけではなかったが,やがて大腸の機能的疾患であるirritable colon過敏大腸症の概念が新に登場し,従来spastic colitis,mucous colitis,およびmechanical colitisなどと称せられていたあいまいなものが過敏大腸症の範疇に含まれるにおよんで6),近年,欧米では原因不明の非特異性大腸炎として本症が大きくクローズアップされる結果となってきている.
一方わが国においても,従来症状や理学的所見だけからしばしば慢性大腸炎という診断が下されていたが,筆者らは大腸各部の生検や細胞診を用いてこれらを検討し,これらの大部分は過敏大腸症の範疇に入ること,および大腸に発生する原因不明の非特異性炎症は,将来はいくつかの疾患に区分される可能性を否定しえないとしても,現段階では潰瘍性大腸炎の範疇に入れざるをえないことを明らかにしている7)8).このように,今日わが国では本症をめぐる考え方が大きく変りつつあるように思われるので,ここでは筆者らが最終的には生検,手術,または剖検による組織学的所見を把握したのちに診断を下した本症84例の臨床成績にもとずいて,本症の頻度,症状,理学的ならびに検査所見,診断ならびに鑑別診断,合併症,内科的療法ならびに外科的療法の適応,および予後について検討を加えてみたいと思う.
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