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文献詳細

雑誌文献

胃と腸4巻12号

1969年12月発行

今月の主題 潰瘍性大腸炎

綜説

潰瘍性大腸炎の内視鏡検査

著者: 山口保1 田島強2

所属機関: 1青森県立中央病院第三内科・成人病科 2弘前大学医学部松永内科教室

ページ範囲:P.1501 - P.1510

文献概要

はじめに

 潰瘍性大腸炎の精密かつ周到な診断は,詳細な病歴の聴取と糞便を中心とする一般検査のほかに,X線検査・内視鏡検査・病理組織学的検査の三者の有機的な結合によりはじめて可能である1)2)

 とくに内視鏡検査は,潰瘍性大腸炎の好発する直腸・下部S状結腸の検索には極めて重要な意義を有し,その診断確定には直腸・S状結腸直達鏡検査は絶対に欠かすことはできない.

 一方,少数ではあるが,直腸・下部S状結腸には全く病変のみられない型の潰瘍性大腸炎もある.また,直腸S状結腸鏡で観察できる場合でも,その範囲は限局されるので,長大な大腸に波及した病態を正しく把握することは不可能である.これが深部大腸粘膜の観察が強く望まれる所以である.直腸S状結腸直達鏡による深部大腸粘膜観察の試みは,Regenbogenによりなされてはいるが3),姑息的なものであり,その観察可能の範囲もわずか50cmくらいにすぎない.

 深部大腸粘膜の観察は,すでに1957年,松永教授により開発されたSigmoidocameraによりはめじて可能となった.爾来教室では大腸疾患の日常検査として使用し,精密診断に貢献するところが多かつた4)~9).しかし,このSigmoidocameraは盲目撮影であること,および技術的にも難点があり,実地臨床に用いられるには不充分であった.そこでより実用的に直視下,しかも容易に操作できる大腸ファイバースコープの開発を,オリンパス光学工業と協同ですすめた結果,昨年ほぼ満足できる器械の試作に成功した.

 Colonofiberscopeと呼ばれるこの器械は,操作が容易でかつ安全であり,直視下生検も可能であるという画期的なものである10)11).数回の改良を経た現在では,盲腸までの挿入観察成功例もある.実用の域に達した新しい検査法といってよい.これにより,従来の直達鏡検査では不可能であった潰瘍性大腸炎の全病巣の観察が可能となった.しかも,容易に深部大腸での直視下生検組織片が採取され,大腸疾患,特に潰瘍性大腸炎診断の精度は飛躍的に向上した.

 本稿では,直腸S状結腸直達鏡検査,Sigmoidocamera検査およびColonofiberscopyについてそれぞれの実際の手技を簡単に記し,これら内視鏡検査での潰瘍性大腸炎の所見を症例をあげて略述し,さらに鑑別診断にふれる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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