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文献詳細

雑誌文献

胃と腸4巻12号

1969年12月発行

文献概要

今月の主題 潰瘍性大腸炎 綜説

潰瘍性大腸炎の治療

著者: 小平正1 吉雄敏文1

所属機関: 1東邦大学医学部第1外科

ページ範囲:P.1511 - P.1517

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はじめに

 本質的に本病の原因が明らかにされていない今日,内科的にも外科的にもその治療はすべて対症療法の域を出ていないと言えよう.その経過の長短を問わず,病変が大腸の広範囲に進展した揚合,終局的には根治療法は大腸全切除であることに異論はないが,下部直腸の内視鏡検査によって,そこに未だ軽度の限局的な発赤,びらんなどが発見され,生検によって非特異性の粘膜炎症の所見が得られても,これが再発を繰り返しながら本症と確定診断を下されるに至るものかどうかを予測し難いのが普通である.

 かような初期に発見された場合,当然内科的治療が行なわれ症状の寛解を見ることは少なくない.病変が上方に向って進展,増悪する傾向を示し,また一旦寛解しながらいつか再発を来たすような揚合に,外科的療法を決意しても直ちに結腸の全切除を考えず,部分的ないしは半切除にとどめることが少なくあるまいと思われる.しかし従来の経験に徴して本症の多くが残存結腸に再発し,結局再手術によって結腸の全切除のやむなきに至ることが少なくない.それならかような症例においても1次的に結腸全切除を行なうのが本症の外科的根治法だと言えばまさしくその通りではあるが,全切除後の患者に与える日常の負担は並並ならぬものがあるので,一見病変を認めない部まで含めての全切除が躊躇されるのも無理からぬことと思われる.

 冒頭に,内科も外科もすべて対症療法の域を出ないと言ったのは,かような点までを含めてのことであり,筆者自身も今後同じような外科的判断を繰り返すことかと思うのである.本症の初期における診断法の確立と共に,早期の根治的治療法を見出さねばならない.ここには筆者らの経験例を検討し,現状においての考えを述べてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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