文献詳細
今月の主題 潰瘍性大腸炎
綜説
潰瘍性大腸炎の病理―生検診断を含めて
著者: 若狭治毅1 佐藤栄一1 塚本長2
所属機関: 1東北大学医学部病理学教室 2東北大学医学部槇外科教室
ページ範囲:P.1519 - P.1527
文献概要
潰瘍性大腸炎(idiopathic ulcerative colitis)は臨床的に症状の軽快と再発とをくり返す慢性の炎症性疾患であるが,その原因ならびに発生機序については,今日なお不明の点が多い.さらに,本症の示す多様な病像から,これを独立疾患とみなさず,むしろ症候群と考える人も多くなってきた.本症は欧米にくらべ日本では極めて稀な疾患とされていたが,松永1)の発表を契機として注目されるようになり,診断技術の進歩と相まって今日ではそれほど稀なものとはいえなくなった.この理由として,もちろん診断と治療の進歩を第一にあげなければならぬが,本症の概念そのものの変遷もみのがすことのできない事柄であろう.すなわち,Truelove2),Bochus3),渡辺4)によると,大腸の炎症性疾患で病因の確かめられるものをすべて除外し,その後に残ってきたものを包括するというふうにかなり幅広い見方をとっている.このことは,近年急速に進歩した生検材料の診断規準とも関連を有してくる.
筆者らは手術例による病理形態発生を検討し,また同一症例の生検と手術所見とを対比しながら潰瘍性大腸炎の特徴を明らかにしようと試みた.さらに,剖検例における本症の頻度を剖検輯報から調査し,2,3の問題点を見出したので,これらについて報告したい.
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