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文献詳細

雑誌文献

胃と腸4巻12号

1969年12月発行

文献概要

今月の主題 潰瘍性大腸炎 綜説

潰瘍性大腸炎に関する2,3の一般的観察

著者: 春日井達造2

所属機関: 1シカゴ大学 2愛知県がんセンター内科

ページ範囲:P.1529 - P.1535

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 潰瘍性大腸炎は直腸出血,下痢,腹痛,発熱,食欲不振と体重減少を特徴とする直腸と結腸の急性ならびに慢性の炎症性潰瘍性疾患である.直腸S状結腸鏡所見では,浮腫,充血,うっ血およびビマン性斑点状潰瘍と血膿性分泌物を伴う粘膜の易出血がみられる.組織学的には多型核細胞にリンパ球,単核球およびプラズマ細胞が加わった組織反応が認められる.陰窩膿瘍(Crypt Abscesses)もしばしばみられるが.この疾患に特有なものではない.病変は粘膜層と粘膜一ド層に始まり,最も著明であるが,全腸壁を侵すこともある.レ線的特徴は直腸と結腸の膨張性の減少,微小ulcerationsを示す辺縁の”のこぎり歯状の切れ込み”,結腸の正常なHaustra形成の喪失,腸の狭窄と短縮ならびに粘膜パタンの偽ポリープ様変化である.X線でみると,少なくとも50%の患者では全大腸がおかされ,45%に結腸のいろいろの部分の変化がみられ,ほぼ5%には病変は認められない.これはおそらく経過の軽いためであろう.

 発病は軽くて直腸出血が唯一の症状である場合もあるが,ときには急激で,発熱,毒血症,激しい下痢,血液,電解質および液体の著明な喪失を伴うこともある.潰瘍性大腸炎の経過はいろいろで,長期の症状緩解もあリ,度々の一時的悪化もみられ,あるいは持続的な進行性疾患になることもある.再発は最初の病変,の解剖的な広さの範囲以内にしばしば現われ(例えば下行結腸,S状結腸および直腸),臨床的に病状が再び活動的になっても解剖学的にそれ以上進行しないという事実は興味のあることである.再発はしばしば感情的緊張,上気管道感染および他のいろいろな疾患,肉体的疲労,食餌の下摂生,抗生物質や下剤の使用,手術,女性の場合はまた月経などに伴っておきる.このように“triggering”(誘発因子となる)事情は多種多様であり,すべての困難な黙生活状況”を含んでいる.潰瘍性大腸炎は局部と全身の合併症をもつ疾患である.結腸の合併症は出血,結腸周囲炎,穿孔,腹膜炎,狭窄,閉塞,中毒性拡張および結腸癌の頻度の増加などである.全身的には貧血,低蛋白血症,関節炎,強直性背椎炎,仙腸骨炎,結節性紅斑,壊疸性濃皮症,虹彩炎,血管血栓症,血小板増加症,脂肪肝,肝炎,胆管周囲炎および胆汁性肝硬変,腎孟腎炎,腎石症,膵と副腎の炎症性変化および軽度の性格異常,精神分裂症,急性精神異常,麻薬常習および自殺の企てなど感情的な問題も合併症に含まれている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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