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今月の主題 潰瘍性大腸炎 研究
胆・膵管内視鏡的診断法―第3報:十二指腸ファイバースコープの試作とその検討
著者: 西村明1 大坪雄三1 田紀克1 広田和俊1 平島毅1 黄江庭1 金城和夫1 原輝彦1 三好弘文1 佐藤博1
所属機関: 1千葉大学医学部第二外科
ページ範囲:P.1565 - P.1572
文献購入ページに移動胃の内視鏡検査は胃カメラについては1950年,宇治1),杉浦,深海らによって発表されて以来,幾多の機構・性能上の改良が施され,現在ではほぼ完成された観を呈している.一方,1957年,Hirschowitz2)がファイバーオプティックスの原理を応用して胃十二指腸ファイバースコープを開発して以来,その適用分野は胃粘膜面の観察のみならず,その他の消化管や心臓その他の臓器にも及んできつつある.一般にファイバースコープを含めて内視鏡検査の応用範囲は体表面に開く内腔臓器より漸次深部臓器に進んでゆく傾向にあるといえる.すなわち消化管系においては口側では食道,胃に至るまで,肛門側では直腸より上行結腸に及んでいるのが現状である.口側よりのアプローチとして,十二指腸についてはHirschowitz3)が1961年,Gastroduodenal Fiberscopeを用いて観察したのが最初であるが,以後Jones4),Fulton5),Burnett6),Kemp7),Cohen8),Watson9)らがそれぞれ行なっているが,いずれもガストロファイバースコープを用いている.1967年,Riderら10)はHirschowitzのガストロファイバースコープでは十二指腸への挿入率が低いため,より細くて柔軟性のある新しい十二指腸専用のファイバースコープを考案し,挿入については12例中11例成功の好成績を示したと報告している.以上のように十二指腸ファイバースコープについては,現段階では従来のガストロファイバースコープをそのまま転用する方法と,新しく十二指腸ファイバースコープを試作し応用する方法とがある.筆者らは,以下に述べる理由により十二指腸,とくに乳頭部観察を行なうには,十二指腸の解剖学的,生理学的特性に従った専用の十二指腸ファイバースコープが新しく開発されねばならないと考えている14,15,16).すなわち,
1)十二指腸,さらに小腸を含めて挿管を進めるには,腸管の解剖学的構造からみて,胃ファイバースコープとことなり,機械的におしこむことは困難である.よって挿入には胃および腸の運動を利用するのが妥当であって,ファイバースコープの形態としては細くて軟性のものが望ましい.
2)十二指腸粘膜および乳頭の探索ならびに観察は直視式でもよいが,今後乳頭に加えるべき操作を考慮すると,対象を正確に傭瞼できる側視式に利点があることは申すまでもない.
また従来より行なわれている方法,すなわちファイバースコープを一定位置まで到達させた後,これを引きぬきつつ探索・観察を行なうことは可視範囲が不定かつ限定され,腸管内腔を全周にわたって見ているとは必ずしもいえない欠点があった.そのため病変(乳頭を含めて)の見落しがある可能性がある.現在までの報告例では連結部の追従性を期待して操作部を回転し,先端をまわす方法,外筒の保護のもとに内筒(ファイバースコープ)を回転させる二重管式,体外部よりファイバーに沿わせたワイヤーをひき先端部を回転させる方法などが考えられたがいずれも回転が十分でなく,任意の位置に確実に停止させることができないように思われる.
したがって側視式で先端レンズ部の回転(360回転,希望位置で確実に回転開始および停止ができる機構)が可能なファイバースコープが望ましいことになる.
3)十二指腸内で対象との間に安定した明視の距離を保つために空気送入を行なうことは,胃とことなって解剖学的に空気の保持に難点があり,バローンやカブでもこの目的を満足させるものが得られていないように思われる.したがってわれわれは一定の明視の距離を保つことのできるなんらかの腸管内腔の機械的拡張が必要であると考えている.
4)またこの方法によると,今後予定されている乳頭内操作を行なう上で,視野の固定維持および「足掛かり」を与えられる利点がある.
5)機構的に複雑となる可能性がある.また安全性については電気関係や回転および機械的拡張方法に関して絶対に保証確立されたものでなければならないことは勿論である.
以上の諸点を考慮して,われわれはオリンパス光学工業株式会社の協力を得て,今回十二指腸ファイバースコープの試作を行ない,少数例ながら臨床的応用を試み,動物実験において2,3の知見を得たので報告する.
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