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文献概要
今月の主題 稀な胃病変
胃内回虫症
著者: 市岡四象1 横山泉1 山内大三1 山下克子1 鎌田達雄2 森忠夫3
所属機関: 1東京女子医科大学消化器病センター 2大阪医科大学岩田内科 3岡山県日本原病院
ページ範囲:P.585 - P.588
文献購入ページに移動この特集の中に「胃内回虫症」が加えられて,つくづくと疾病の変遷を感じさせられた.
戦前のわが国は「寄生虫王国」というあまり有難くない代名詞まで与えられた程で,とくに回虫の寄生率は全国的に高率であった.
終戦直後から昭和23年頃は岩田繁雄教授のいう「敗戦症候群」の名称で代表されるように都市でも69~92%の高率に回虫感染がみられ1),寄生虫学関係の論文も激増している.
しかし,第1表2)にしめすように昭和25年頃から食生活の改善,強力な駆虫剤の開発,集団駆虫の徹底などの効果が芽生えて回虫寄生もだんだんと減少し3)4)5)6),昭和30年頃には全国平均30%,さらに昭和39年には6.8%と激減している7).
現在,都市では文字通り「珍らしい疾患」になってきたし,医学生や若い医師の中には回虫卵をみたことのない方もあると思われるが,山村地帯では未だに13~50%の高率に感染している地域があり,その撲滅対策が種々検討されている8)9)10).
われわれの観察し得た胃内回虫症も岡山県北部の山岳地帯で,胃精密X線,内視鏡の進歩した現在では機会が与えられるならば,その病態もより詳細に観察することができると思う.
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