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今月の主題 稀な胃病変
代償性胃出血の1例
著者: 並木正義1 上田則行1 河内秀希1 諸岡忠夫1 朴沢英憲1 鈴木重設1
所属機関: 1北海道大学医学部第三内科
ページ範囲:P.627 - P.630
文献購入ページに移動従来より月経に関連して,大体規則正しく周期的に子宮以外の身体部分から出血のくりかえされる例のあることが知られていた.この場合,月経が無く他臓器からの出血のみをみるとき,これを代償性月経(vicarious or substitutional menstruation)といい,少量の月経出血があり,同時に他臓器からの出血をも伴うとき,これを補充性月経(complementary or supplementary menstruation)と称してきた.この際,出血のみられる子宮以外の臓器としては,後述するように種々のものがあげられているが,胃出血の頻度はきわめて少ない.ことに胃から出血したということを証拠をもって示した報告は,内外ともにいくらさがしてもみあたらない.もっとも胃から出血している時点をつかむのは容易なことではない.かって月経時になると,きまって上腹部の不快感と悪心を伴い,血を吐くという26歳の婦人の精査を婦人科から依頼され,出血部位の検索に苦労したことがあった.吐血がもっとも考えられたのでファイバースコープ検査ものべ9回行なったが,ついに出血部位をつきとめることができなかった.これは患者が札幌在住でなかったので,いつも出血の翌日でないと検査することができなかったためであり,このような場合は,出血後直ちに観察しないと出血部位の発見はむずかしいものと考えていた.
ところがこれからのべる第2の経験例は,身近な看護婦であるという好条件もあって,胃からの出血であることを確めえたので,その状態を写真で示し報告する.
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