文献詳細
文献概要
今月の主題 胃の変位と変形(1) 展望
直腸の診断
著者: 山田粛1
所属機関: 1癌研究会附属病院外科
ページ範囲:P.743 - P.750
文献購入ページに移動Ⅰ.まえがき
われわれが日常行なっている直腸鏡検査は主に直腸癌の発見を目的としているが,もちろん下血,肛門出血,便秘,下痢などを伴う諸種の疾患もふくまれている.直腸癌患者の受診状況は第1表のごとく,約3分の2に6カ月以上の診断遅延があり,その中の約3分の2以上の診断遅延の原因はroutineの検査が行なわれなかったことによっており,技術上の誤診によるものは少ない.従来肛門指診や,直腸鏡検査を省略しないようしばしば警告されているが,臨床材料は依然として進行例が多く,早期例が少ない.また小さい直腸癌は苦訴が少いか,あるいはほとんどないので患者が医師を訪れる機会も少ない.また無症状者あるいは軽い症状のあるものの直腸検査では小さい癌はまれであり.病理組織学的な初期癌はさらにきわめてまれである.われわれの直腸癌手術285例の調査では(第2表),直径2cm以下のものは1.5%,2~3cm6.3%,3~4cm14.7%,4~5cm24.4%,5cm以上52.9%である.また癌の直径と術後5年生存率との関係は直径2cm以下のものは全く良いが,直径3cm以上のものでは予後と腫瘍の大きさとに著明の差はなく,平均5年生存率54%強と大同小異である.癌がある程度以上成長すると,予後に対する諸因子の関与が急に積極的になってくることによる.癌の大きさと浸潤転移の関係を見ると(第3表),2cm以下の6例は全例癌浸潤が壁内に止り,1例にリンパ腺転移があったが,2~3cm群ではすでに約3分の1が直腸壁を貫き,約3分1のにリンパ節転移がある.今もし2cm以内の癌(母指頭大)の発見を目標とすると,永続治癒見込についても満足すべきであり.診断技術上の困難もなく,患者が助かるチャンスは彼が検査の機会に恵まれるか否かにかかっている.第4表はわれわれの約1年間の直腸鏡集計(1964)であるが,検査の動機としては下血ないし肛門出血がもっとも多い.直腸鏡検査で発見された直腸癌は6例,1例はドック健康診断である.
われわれが日常行なっている直腸鏡検査は主に直腸癌の発見を目的としているが,もちろん下血,肛門出血,便秘,下痢などを伴う諸種の疾患もふくまれている.直腸癌患者の受診状況は第1表のごとく,約3分の2に6カ月以上の診断遅延があり,その中の約3分の2以上の診断遅延の原因はroutineの検査が行なわれなかったことによっており,技術上の誤診によるものは少ない.従来肛門指診や,直腸鏡検査を省略しないようしばしば警告されているが,臨床材料は依然として進行例が多く,早期例が少ない.また小さい直腸癌は苦訴が少いか,あるいはほとんどないので患者が医師を訪れる機会も少ない.また無症状者あるいは軽い症状のあるものの直腸検査では小さい癌はまれであり.病理組織学的な初期癌はさらにきわめてまれである.われわれの直腸癌手術285例の調査では(第2表),直径2cm以下のものは1.5%,2~3cm6.3%,3~4cm14.7%,4~5cm24.4%,5cm以上52.9%である.また癌の直径と術後5年生存率との関係は直径2cm以下のものは全く良いが,直径3cm以上のものでは予後と腫瘍の大きさとに著明の差はなく,平均5年生存率54%強と大同小異である.癌がある程度以上成長すると,予後に対する諸因子の関与が急に積極的になってくることによる.癌の大きさと浸潤転移の関係を見ると(第3表),2cm以下の6例は全例癌浸潤が壁内に止り,1例にリンパ腺転移があったが,2~3cm群ではすでに約3分の1が直腸壁を貫き,約3分1のにリンパ節転移がある.今もし2cm以内の癌(母指頭大)の発見を目標とすると,永続治癒見込についても満足すべきであり.診断技術上の困難もなく,患者が助かるチャンスは彼が検査の機会に恵まれるか否かにかかっている.第4表はわれわれの約1年間の直腸鏡集計(1964)であるが,検査の動機としては下血ないし肛門出血がもっとも多い.直腸鏡検査で発見された直腸癌は6例,1例はドック健康診断である.
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