内視鏡で良性様所見を呈した生検陽性例の検討
著者:
奥田茂
,
三枝達明
,
児島淳之介
,
森井健
,
佐野元哉
,
大谷透
,
竹尾信男
,
平井彩衣
,
加藤晃
,
竜田正晴
,
岸田剛一
,
湯川研一
,
岩永剛
,
谷口春生
ページ範囲:P.961 - P.970
Ⅰ.はじめに
癌を疑いさえすれば今日ファイバースコープによる直視下生検あるいは直視下細胞診によってその確定診断を得ることはそれ程困難ではない1).しかし内視鏡的に癌を疑わなかった病変に癌がひそんでいることは,早期胃癌で少数ながら認められる内視鏡偽陰性例の経験や2)胃癌のretrospective studyの成績3)から想像することができる.そこで内視鏡で良性様にみえるものにどの程度癌がひそんでいるかということが問題となる.このことは誤診を防ぐために,また胃癌をより早期に発見するために是非解決しなければならない問題である.
胃癌の早期診断の具体的な手順として著者らはレ線癌疑いや,内視鏡で少しでも悪性を疑わしめる所見のある場合に,従来は一般洗滌細胞診,2~3年来は直視下洗滌細胞診を原則として行ない,これらが陰性でなおかつ癌が疑わしい場合直視下生検を行なう方式をとってきた.ところが昨年11月著者らの開発による生検用ファイバースコープのカラーテレビが実用化し(第1図,第2図),生検手技の確実化と生検能率が大幅に向上したため最近は癌・非癌の鑑別診断だけでなく癌化の問題の研究資料となることを期待して明らかに良性と思われる限局性良性疾患にも積極的に直視下生検を行なっている,この様にして行なった生検症例を検討し,どの様な病型では胃癌を見落しやすいか,それらはどれ位あるか,誤診を除ぐためにはどうすればよいか,また従来良性として生検,細胞診を行なわなかった病変にどの程度癌がひそんでいるかなどについて,著者らが得た成績を報告する.