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文献詳細

雑誌文献

胃と腸4巻8号

1969年08月発行

文献概要

今月の主題 X線・内視鏡で良性様所見を呈した生検陽性例 綜説

X線・内視鏡で良性様所見を呈した生検陽性例

著者: 福地創太郎1

所属機関: 1虎の門病院消化器科

ページ範囲:P.971 - P.981

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Ⅰ.はじめに

 X線および内視鏡検査の発達と共に,早期胃癌の診断は,最近ますます微細病変や非定型的な病変を対象とするようになっている.定型的なⅠ,Ⅱa,Ⅱc,Ⅱc+Ⅲ型などの病変の診断は問題でないが,良性ポーリプと鑑別困難なⅠ型,いわゆる異型上皮の増殖によるⅡa subtypeとⅡa型早期胃癌との鑑別,潰瘍周辺の浅い境界不明瞭なⅡc,さらにはⅡbないしⅢ型病変の確定診断に当っては,FGS生検の果す役割は極めて大きい.

 X線および内視鏡による早期胃癌の診断は,病変の形態学的パターンから,probabilityによる良性悪性の鑑別を行なうものである.したがって,一方において早期胃癌と紛らわしい所見を呈する良性病変があり,他方において良性様所見を呈する早期胃癌がある.その鑑別の困難の度合は症例によりまちまちであり,それぞれの病変の肉眼的形態が,良性および悪性病変において占めるprobabilityの差によって異なってくる.

 さらに,実地診療上の立場から諸検査を進める過程と,病変そのものの推移という,時間的要因を無視することはできない.臨床的に早期胃癌を診断する場合,第1次X線検査に始まり,一連の検査の手順をふむものであり,その各段階で診断の内容は変ってくる,当初潰瘍周辺の浅いⅡcを確認できず良性と診断したが,生検により癌と診断された後に再検査を行ない,病変部を詳細に観察した結果,初めて早期胃癌としての肉眼的所見が把えられる場合も当然生じてくる.このような例は,結果的には見落しには違いないが,なお生検施行前の段階で,早期胃癌と確診することは,むしろ困難といわざるを得ない例も少なくない.他方早期胃癌,殊に陥凹型の病変では,比較的短期間にその肉眼的形態が変化する揚合がある.このような例では,経過を観察することにより,初めて早期胃癌を疑うべき所見が明らかになることも稀ではない.

 臨床的に良性様所見を示す症例といっても,一連の検査の過程および病変の推移の過程の種々の段階で異なってくる.しかし生検の実際的役割という観点からみると,生検を必要とし実際にそれを行なった段階において,肉眼的診断がどの程度可能であったか,生検がどの程度有効であったか,またその後の再検査により肉眼的診断がどの程度補正されうるかということを明らかにする必要がある.以下このような観点から,X線および内視鏡で良性様所見を呈し,生検で癌と診断された早期胃癌の症例について検討したい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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