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文献詳細

雑誌文献

胃と腸4巻9号

1969年09月発行

QUESTION & REPLY

“Considerations about superficial and ‘Early’ gastric carcinoma”に答えて

著者: 村上忠重123 João Carlos Prolla4

所属機関: 1「胃と腸」編集委員会 2早期胃癌研究会 3順天堂大学医学部第1外科 4

ページ範囲:P.1183 - P.1190

文献概要

 左記のような原稿が春日井委員を通じて編集委員会にもたらされた.相談の結果,これは早期胃癌という言葉を私どもが用いている限りつきまとう閥題であるので,この際,手紙に対する返事のような形で私どもの考えを表明しようということになった.ことに日本で用い始めた医学用語が外国に輸出されることは比較的稀なことなので,それなりに十分な配慮というか,それが生まれてきたいきさつ,ないしは背景をある程度詳しく述べておくことが必要であるように思われる.

 私どもも現在,すなわち1969年の時点に立ってこの種の胃癌を学問的に正しく命名せよといわれれば,あるいはsuperficial carcinoma,もしくはlimited carcinomaという言葉を選んだかもしれないと思う.しかし予後のよい胃癌,切れば100%に治る胃癌を早期胃癌という旗印の下に求めて,長い間暗中模索し,その後,次第に手懸りを得て,ある種の症例をグループ化し,その概念をまとめあげて,それにもっともよく適合する定義として「癌のひろがりが粘膜層または粘膜下層までで限局しているもの」という組織学的な約束を作り上げるに至ったさい,それでは最初に掲げた旗印の表現が少し非論理的になったからといって,そう簡単に変更できるものではない.いいかえれば,私どもも始めからすべてを知っていたのではなく,治る癌をと追い求める長い間の努力によって次第に現行の概念へと近づいたのである.そして私どもは,その結果生じた論理と名称の食い違いを多少残念だとは思うけれども,学問ことに医学の進歩というものには,ことに臨床や公衆の健康に関係する知識の進歩には,多少の食い違いが生ずることは止むを得ないのではないかと考えている.私どもが日頃用いている言葉の中にもそれに類する沢山の医学用語を多数見出すことができるからである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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