icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸40巻12号

2005年11月発行

文献概要

今月の主題 胃癌EMR後の異時性多発を考える 主題

胃癌EMR後の異時性多発癌―臨床病理学的検討

著者: 藤崎順子1 高橋寛2 石山晃世志1 斉藤充生1 山本頼正3 帯刀誠3 土田知和3 星野惠津夫3 藤田力也3 山本智理子3 加藤洋3 大山繁和4 山口俊晴4

所属機関: 1癌研有明病院内視鏡診療部 2癌研有明病院内検診センター 3癌研有明病院内病理部 4癌研有明病院内外科

ページ範囲:P.1609 - P.1621

文献購入ページに移動
要旨 1993~2005年に当院で施行されたEMR1,785例中,経過観察中に発見され治療された,異時性多発癌43例111病変について検討した.二重癌27例,三重癌11例,四重癌4例,五重癌1例であった.発生時期は二重癌ではEMR後5年以内に81%で次の病変が発見されていた.三重,四・五重癌ではすべての病変が前の病変から6年以内に発見されていた.組織型は高分化型同士の組み合わせが,それぞれ67%,82%,80%にみられたが,高分化型と中分化,未分化型の組み合わせが18~33%にみられた.刷子縁陽性率は二重癌より,三重,四・五重癌の高分化型腺癌のみの症例に高くみられた.経過観察中に最終的に胃切除が施行された症例が5例あった.5例中3例は3~4cm大のIIa型であり,範囲診断が不明瞭であった.これらの症例は組織学的に高~中分化型腺癌で一部に未分化成分を持ち,免疫組織学的には胃型形質を持った早期胃癌であった.

参考文献

1)竹腰隆男,藤井彰,高木國夫,他.内視鏡的ポリペクトミーによる早期胃癌の治療―Curative polypectomyとして.癌の臨 32 : 1185-1190, 1986
2)多田正弘,苅田幹夫,柳井秀雄,他.治療内視鏡法としてのstrip biopsyの意義. 胃と腸 23 : 373-385, 1988
3)平尾雅紀,小林多加志,長谷良志男,他.胃の腫瘍性病変に対する内視鏡的切除法.Gastroenterol Endosc 25 : 194-195, 1983
4)冨松久信,馬場保昌,加来幸夫,他.早期胃癌の内視鏡的治療における同時性,異時性多発癌症例の検討―外科切除例との対比. Gastroenterol Endosc 35 : 2106-2115, 1993
5)冨松久信,馬場保昌,加来幸生,他.多発早期胃癌―内視鏡治療の立場から : 外科切除例多発早期胃癌も含めて.胃と腸 29 : 667-681, 1994
6)横田欽一,渡二郎,小松英樹,他.早期胃癌EMR症例の経過観察成績―高齢者と非高齢者の比較.日本高齢消化器医学会議会誌 1 : 115-119, 1999
7)多田正弘,檜垣真吾,松元裕輔,他.術後経過からみた早期胃癌内視鏡的根治切除の限界と対策―長期経過例からみたstrip biopsyの問題点と対策(特に同時・異時性多発病変の検討).胃と腸 28 : 1441-1451, 1993
8)Uemura N, Mukai I, Okamoto S, et al. Effect of Helicobacter pylori eradication on subsequent development of cancer after endoscopic resection of early gastric cancer. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 6 : 639-642, 1997
9)日本胃癌学会(編).胃癌取扱い規約,13版.金原出版,1999
10)Moertel CG, Bargen JA, Soule EH. Multiple gastric cancers ; review of the literature and study of 42 cases. Gastroenterology 32 : 1095-1103, 1957
11)上西紀夫,下山省二,山口浩和,他.「残胃の癌」の分類と発生機序.消外 16 : 1253-1265, 1993
12)高木國夫.多発胃癌.胃と腸 29 : 625-626, 1994
13)細川治,海崎康治,森下実,他.早期胃癌術後残胃の内視鏡サーベイランス.胃と腸 39 : 985-995, 2004
14)田辺聡,大井田正人,三富弘之,他.早期胃癌の術前診断(EMR適応病変を中心に)―内視鏡の立場から.胃と腸 36 : 1615-1624, 2001
15)熊谷一秀.周囲胃粘膜よりみた多発早期胃癌の臨床病理学的研究.日外会誌 3 : 282-296, 1982
16)山田哲司,金平永二,佐々木正寿,他.多発胃癌の臨床病理学的検討.日消外会誌 20 : 2712-2717, 1987
17)小坂健夫,三輪晃一,米村豊,他.多発胃癌の臨床病理学的検討.日消外会誌 21 : 2362-2365, 1988
18)馬場保昌,中村恭一,菅野晴夫,他.二重重複癌の病理組織学的研究―組織型の組み合わせに関する解析.癌の臨 19 : 28-39, 1973
19)下田忠和,藤崎順子.早期胃癌内視鏡的根治切除の適応拡大の将来像―私はこう考える : 病理学的立場からみた内視鏡的粘膜切除の適応拡大.胃と腸 28 : 1456-1457, 1993
20)八尾隆史,大屋正文,宇都宮尚,他.多発早期胃癌の見逃し病巣の検討.胃と腸 29 : 633-642, 1994
21)吉野孝之,下田忠和,斉藤敦,他.早期胃癌における胃型分化型腺癌の肉眼的特徴とその臨床治療.胃と腸 34 : 513-525, 1999
22)高橋宏明,遠藤高夫,今井浩三,他.多発胃癌における粘液形質の検討.胃分泌研究会誌 33 : 1-3, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?